野村ともあき【非公式】ブログ|前堺市議会議員

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大阪都構想のここがヤバいよワースト10

2015年4月3日追記:2015年改訂版を書きました→リンク


堺市長選挙(投票日は9月29日です)もいよいよ後半戦に差し掛かってまいりました。
先日にはマスコミ各社より事前の世論調査の結果として「竹山氏リードか?」との報道がなされたようですが、実際の選挙結果が世論調査通りにならないことは常なので、私は全く信用していません。
毎日街頭に出ている私の感覚ですと、現在の情勢は完全に真っ二つ。ずばり五分五分です。
私も色んな選挙を経験しておりますので、皆さんの表情や反応、ビラの取り方、声かけなどで、ある程度、戦況を感じ取れます。今回の選挙は争点と賛否がはっきりしている分、有権者の反応が非常にわかりやすい面があります。そういった観点をすべて勘案して、総合的に分析した私の判断が「五分五分」です。これからの最終決戦に向けてネジを巻いていきたいと思います。


さて、こんな情勢ですから、選挙の論戦も激しさを増しています。意見や主張は真っ向から対立し、正直、一般の方々からは「どちらの意見が良いのかわからない」という声を多くいただきます。先述の世論調査でも大阪都構想について「よくわからない」という回答が3割を越えるという結果もありました。確かに、各陣営お互いに良い所しか言いませんので、一般の方々には判断が難しい部分があるかと思います。


……というわけで、今回は私の考える「大阪都構想」が“ヤバイ”理由をベストワースト10形式で書くことにしました。
「相手の批判じゃなくて自分らの主張する政策を書け」というご指摘は、これまで山ほどいただいてます、はい(^^;)。私はそれでも「大阪都構想」というのは“相当ヤバイ制度の変更”だと考えておりまして、どんな“ビルド”の政策より“大阪都構想の阻止”の方が重要だと思いますので、今回だけはご容赦願いたいと存じます。
※長文になってしまったので細かい話は、文末に「脚注」としてまとめました。興味のある方はそちらもお読み下さい。(脚注リンクをマウスオーバーしても読めます。ただしブラウザによる)


それでは10位から順にいってみたいと思います。どうぞ!



◆第10位 実は「都」じゃない。
最初なんで、あまりヤバくない点から(^^;)
実は、正式には「大阪都」という名称は使えません。私も本当は正確を期すためできるだけ使いたくないんですが、話がわかりにくくなるので仕方なく使っています。*1


◆第9位 推進の最大の理由だった「二重行政」が堺市にはない。
堺市政令市移行の際に大阪府と事務移譲について協議を行っており、二重行政の弊害は存在しません。*2


◆第8位 国の方針と全く真逆の制度変更である。
政令市を潰して府に権限を戻す都構想は、道府県から政令市に権限を譲るという国の方針と全く逆の制度変更です。*3


◆第7位 ロードマップに一貫性がない。
10年後に道州制を目指すとしながら、多大なコストをかけて都構想を行う理由が不明です。*4


◆第6位 マニフェスト「堺八策」との整合性がない。
維新のマニフェストには、大阪都にするなら不要な政策、実現性が失われる政策、矛盾する政策などが散見されます。*5


◆第5位 財政効果がほとんどなかった。
当初の4000億円と言っていた財政効果は、試算では実質270億円程度しかありませんでした。*6


◆第4位 統合される大阪府と市の財政が深刻。
大阪府は、借金をするのに国の許可が必要なほど財政が悪化しており、また大阪府大阪市の借金の合計額は10兆円を超えています。*7


◆第3位 東京都制を手本にするという発想自体がそもそもおかしい。
東京が発展して来たのは「都制」だったからではありません。よって経済発展のために自治体の枠組みを変えるという発想自体がそもそもおかしいのです。*8


◆第2位 堺市がなくなる。
なんと言おうと、堺市はなくなります。堺市がなくなることは「大阪都法案」の第一条に書かれている事実です。
*9


◆第1位 元に戻せない。
最近になって、私が一番ヤバイと感じてるのがこれです。大阪都構想の最大の弊害は「政令指定都市に戻すことがほぼ不可能」である点です。
大阪都構想には様々な制度的な不備、矛盾、限界、効率の悪さがあることは既にお示ししてきましたが、それでもやってみてダメだとわかった時に、元に戻すことができません。この影響は恐らく数十年に渡り尾を引くことになるでしょう。

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以上、大阪都構想の弊害について細かく挙げてみました。
まあ、未来に関することですので、予見できない事象もあるかと思いますが、とにかく大阪都構想にはこれだけの疑問符がつきます。
大阪都構想は「百害あって一利なし」というレベルではなく、実現されたらかなりヤバイ制度の改悪であるということを私は強く訴えたいと思います。
堺市民のみならず全国の多くの方々におかれましては、大阪、地方自治の将来について、是非ともしっかりとお考えいただきたいと切に願います。



【おまけ】
参考までに、以下に大阪都から政令市に戻す手順をお示しします。雑学としては面白いと思います。雑学としては……。


特別区を再び政令市に戻す方法」

  1. 人口要件の50万人(実際は70万人程度か)を確保できる、特別区の合併案を作る。
  2. 当該のすべての特別区の区議会で合併案を議決、承認。
  3. 都知事に合併案を申請し、都議会で議決。
  4. 総務大臣へ届け出ることで、とりあえず「70万人の特別区」が実現
  5. ここで問題発生。地方自治法の規程では、「市」となれるのは「普通地方公共団体」と定義されているので、「特別地方公共団体」である特別区は「市」になれません。制約なく移行できる普通地方公共団体はなんと「村」だけのようです。というわけで、
    1. まず「70万人の特別区」を廃止
    2. 廃止した「区」と同一の区域の「村」を設置
    3. 「村」で「市制施行」を行い「市」に。
  6. そこから政令指定都市移行手続きとして
    1. 市議会での政令市移行に関する議決
    2. 府知事へ要望
    3. 府議会の議決
    4. 総務大臣へ要望
    5. 閣議決定
    6. 政令の公布
  7. めでたく政令指定都市移行


となります。う〜ん、かなり大変ですね(^^;)
ちょっとヤバイと思いませんか?

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*1:大阪都構想」「都構想」という名称が定着してますが、実は「大阪都」という名称は使えません。大阪都構想を実現するために制定された法律である「特別区設置法」には“特別区を設置できるルール”が書かれているだけで、道府県の名称を「都」にする規定はありません。現行の条文では「大阪府」は「大阪府」のままです。

*2:大阪府大阪市の二重行政の問題は以前から言われており、行政上の課題だったのは事実です。だからこそ、7年前に政令指定都市に移行をした堺市は、大阪府としっかり協議をし、約1000項目の事務事業の整理を行いました。

*3:地方に関する国の大きな方針は、政令市でできることはできるだけ都道府県から政令市に移譲することです。ところが大阪都構想は、政令市から府に権限を戻すという全く逆の制度変更です。このまま行くと、大阪だけが全国の政令市が歩調を合わせて取り組んでいる地方制度改革から大きく逸脱し、一人だけ変な方向へ進むことになってしまいます。

*4:大阪維新の会さんが示されているロードマップによると、大阪都実現以降は「道州制」を目指すということです。一方、日本維新の会みんなの党と共同提案した道州制法案によると、法施行後10年程度で道州制に移行するとのことですが、10年程度で潰してしまう大阪都を、膨大なコスト(人、金、時間)をかけて作ることにどんな意味があるのでしょうか? 大阪都構想については現行の制度の詳細も不明瞭ですが、“大阪都後”についても、それをやることが道州制にどうプラスに働くのかという長期的なビジョンやプランがありません。

*5:例えば東区、美原区LRTを整備するとの記述がありますが、路面電車の整備は東京都の例では特別区の事業であり、恐らく400〜500億円程度の財政規模しかなさそうなこの地域にLRTを建設する財政的余力はないでしょう。仮に広域でやるにしても後述するように大阪都の財政難は深刻で、堺市の僻地にこのような資本投下がなされるか甚だ疑問です。つまりLRTをやるなら堺市政令市である方が圧倒的に実現性が高いのです。そもそも維新の政策によると2、3年で居なくなってしまう堺市長の公約というところに妙な違和感を感じます。

*6:当初、4000億円と見積もられていた都構想による財政効果は、現時点での試算では976億円程度にとどまりました。これは二重行政があるとされてきた大阪府大阪市の数字であり、地下鉄民営化など大阪都と直接関係のない額も含んでいます。二重行政も地下鉄もない堺市の効果額はもっと低くなるでしょう。ちなみに、移行のための初期コストは約640億〜300億円、毎年必要な経費として約130億〜60億円のコスト増が見込まれるそうです。

*7:制度設計では、大阪市堺市の借金はいったん大阪都がすべて背負うことになっています。すでに大阪府は地方債の発行に総務相の許可が必要な「起債許可団体」に陥っており、この上、大阪府大阪市の市債3兆円を承継するとなると、財政的に極めて深刻な状態になるのは確実です

*8:東京都制は太平洋戦争の東京空襲に備えて急遽敷かれた特殊な自治体の形です。経済発展を目指して合理的、論理的に作られた制度ではなく、現在に至って様々な課題を内包しています。また、政令市を特別区に分割すれば全体としてのコストは上がることは間違いありませんし、様々な考えや思想の知事、都(府)議会議員、公選区長、区議会議員が生まれることで行政執行上の弊害となることが懸念されます

*9:「大都市地域における特別区の設置に関する法律」第一条 この法律は、道府県の区域内において関係市町村を廃止し、特別区を設けるための手続(中略)を定める