野村ともあき【非公式】ブログ|前堺市議会議員

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2013年各政令市長選の簡単な結果まとめ

早いもので堺市長選挙が終わってから1か月が経ちました。
今年は政令指定都市首長選挙が大変多く、先週は川崎市と神戸市で市長選挙があったほか、名古屋、さいたま、千葉、仙台、横浜、堺、岡山と20政令市中、9市で市長選が行われました。一年の間にこれだけ多くの政令市長選挙が行われる機会というのもあまりありませんので、ここで総括的に振り返っておきたいと思います。
ただし、いわゆる“勝った負けた”の結果分析ではありません。下記の記事にあるように自民党本部でも各政令市長選の結果を注視しているようですが、地域の背景にある社会的な事情を読み取り、国と地方の政治の方向性を探るきっかけになればな〜というところが目的です。


参考:自民、「相乗り」含め地方選を検証 川崎市長選敗北受け - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131028/stt13102823560004-n1.htm


■各政令市長選の簡単な結果まとめ

名称 投開票 当選者(前職) 次点候補 自民勝敗 短評
名古屋市 4/21 河村たかし(衆) 藤沢忠将(市議) × ダブルスコアで現職圧勝
さいたま市 5/19 清水勇人(県議) 長沼威(県議) × 民→無の現職が53000票差で再選
千葉市 5/26 熊谷俊人(市議) 共産党候補(党委) 不戦敗 民→無の現職が2位に6倍差圧勝
仙台市 8/11 奥山恵美子(副市長) 共産党候補(党委) 現・共の争いで現職がトリプルスコア圧勝
横浜市 8/25 林文子(民間) 共産党候補(市議) 現職が2位に5倍の票差で圧勝
堺市 9/29 竹山修身(府庁) 維新候補(市議) 現職vs維新。現職が58000票差で再選
岡山市 10/6 大森雅夫国交省 元民主候補(衆) 自公民推薦候補が2万票差当選
川崎市 10/27 福田紀彦(県議) 秀嶋善雄(市財政局長) × 無所属候補が自公民推薦を3000票差で破る
神戸市 10/27 久元喜造(副市長) 無所属候補(民間) 自公民推薦候補が5000票差で辛勝

太字自民党が支援した候補者
※勝敗の△印は党本部の推薦ではなかったケース


とりあえず客観的な事実から…。


まず、現職が立候補した選挙(名古屋、さいたま、千葉、仙台、横浜、堺)では、すべて現職が勝っています。首長選挙における現職の強さが際立っています。
この中で、さいたま、千葉、仙台、横浜の現職候補は、4年前(2009年)に民主党の推薦を受けて初当選した方々です。2009年といえば言うまでもなく民主党政権交代の年で、当時の民主党の勢いが伺えます。しかし、今回は情勢の変化を受けて、政党推薦に対する対応はそれぞれの地域で分かれました。
さいたま市では、今回民主党の推薦を受けず“市民派”を前面に打ち出した現職に対し、自公が果敢に独自候補を擁立しましたが53000票の大差で敗れました。
千葉市では、自民党の独自候補擁立を目指したそうですが一本化できず、自主投票となりました。結果、さいたまと同じく政党色を薄めた現職候補が圧勝しています。
仙台、横浜ではともに女性の現職候補に自公民が相乗りする形となり、現職が3倍差、5倍差という圧勝を果たしました。ただし両市ともに極めて低い投票率で、選挙は盛り上がらなかったようです。


また、名古屋、堺の現職候補は、前回の選挙において、河村たかし(本人)と橋下徹(支援)という極めて知名度の高い人物が選挙戦の主導権を握ったという点で共通しています。2009年という政治の変動期に“モンスター政治家”と呼ばれた両氏の台頭があったことは興味深い事実です。


一方、岡山、川崎、神戸は現職の引退に伴い、全員新人で争われた選挙でした。この三政令市の選挙で自民党が支援した候補はすべて中央官僚出身者(川崎の秀嶋氏は総務省→市財政局長、神戸の久元氏は総務省→副市長)で、かつ自公民の相乗り推薦となっています。結果は上記の表の通り。


最後に、名古屋と川崎で当選した候補、そして5000票差で敗れた神戸のコンサル会社社長、堺の維新候補は、支援の形に差異はあれど減税日本みんなの党、維新の会といった新興政党をバックに戦った候補者です。彼らには「既成政党批判」「公務員改革」「市民目線」「民間の活用」などを政策の柱にしている点と、都市部で多くの支持を集めているという共通項があります。それぞれの地域で事情は異なるかと思いますので、勝敗の結果を一律に比較することはできませんが、政令市という大都市において、これらの勢力は非常に大きな存在感を発揮するようになっています。今後も影響力は増大していくでしょう。


以上、各政令市の市長選の結果についてざっくり書きました。
これらを俯瞰すると国政と地方の首長選挙は全く違うことをつよく感じます。首長選挙衆議院小選挙区参議院の一人区も、一人しか当選しない選挙という点では同じですが、相乗りの有無と全国同日執行かどうかという点が大きく異なります。


衆議院選挙区でも参議院一人区でも各政党はそれぞれ一人の候補者を出すのが普通です。選挙協力はありますが相乗りはほぼありません。
各政党同士の個別の争いであれば自民党は野党各党に対し圧倒的な強さを発揮しています(2013年時点では)。また国政選挙は同日に全国一斉に行われるので、党本部が展開する一大キャンペーンの後押しも受けられますし、それらは政党規模の大きいほうが有利です。
一方で、首長選挙は執行日もバラバラで、相乗りに党本部が一歩引いてしまうケースもあり、党の全面的なバックアップが受けにくいという実情があります。


党本部の支援がなければ勝ち切れないということは、地方組織が弱い=地方組織票(力)だけでは勝てる水準に達していないということです。衆参の国政選挙の結果ほど、地方における自民党の党勢は強くないというのが実情です。先に示した今年の政令市長選挙の結果を見る限りでは、首長選においては自公に民主が乗ればなんとか(無難に)勝てるかな〜というのが現実的な当事者感覚でしょう(現実はもっと厳しい)。


ところで、自・民の相乗りが生じるのに別の理由もあります。
客観的に見て現在の民主党には独自候補を立てる力はありません。しかし労組をバックにした地方の民主党組織力は、単独では当選までは行かないものの、戦局を左右するだけの影響力は持っています。首長選挙の候補者が自民党籍を持たない無所属候補の場合、「民主党も敵に回すくらいなら味方に」という意識が働くのは自然な流れです(前述の通り、仙台、横浜のように自民が元・民主に乗る逆のパターンもあります)。この結果が、上記の通り9つの政令市長選挙中、6つで自(公)民相乗りの構図を生み出したわけです。


この既成政党による相乗り傾向を徹底的に批判し、存在感を増しているのが前述した名古屋、川崎の当選市長、神戸の民間人候補、堺の維新候補などに代表される方々です。
この方々からすると私などは批判される立場になるわけですが(笑)、上記の方々の主張は意見として真っ当だと思いますし、多くの有権者から支持を得ていることも十分理解しています。恐らく、冒頭で紹介した参考記事の石破幹事長も同じような感覚で改革の必要性を感じておられるのだろうと、勝手ながらお察し致します。


既成政党批判や官僚・公務員批判は、正しいか正しくないかというような二者択一の問題ではありません。地方行政を熟知した総務官僚が首長を務めることで良い面もたくさんあります。しかし批判の声、あるいはなんとなく批判的な気持ちが既成政党や公務員に向けられている現状に対して真摯に向き合うことは、我々にとって重要です。


政令市長選挙は10万票単位の大きな選挙です。今後、住民生活に直結する地方行政を安定させるためにも、大都市において有権者とどのように対話を深めるのか、その内容、方法論などを様々な面から模索、検討していくことはこれからの大きな課題でしょう。
私も知恵を絞って参りたいと思います。

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いやまあしかし、昨年末には衆議院選挙があり7月には参議院選挙があった中で、その合間を縫って市長選を戦われた皆様におかれましては、本当にお疲れ様でした。(他党の皆さんも)


私もだいぶ疲れました(^^;