堺市長候補 野村ともあきブログ

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その4 2025年大阪万博 開催に向けての課題 ~2005年 愛・地球博を振り返る(投資と経済効果編)

年末年始をまたいで少し間が開きましたが、「大阪万博開催に向けての課題 その4」について書きたいと思います。

本ブログでは、「その1」で会場建設等ハード整備上の課題について、前々回「その2」では開催計画などのソフト面の課題、そして前回エントリ「その3」では今回の大阪万博ロールモデルとした2005年の愛知万博がどのようにして開催に至ったのかを振り返りました。

 

本ブログの中で何度も繰り返し言って来ましたが、私は万博開催に「賛成」です。
私がこれらの課題を指摘し続けるのは、祝賀ムードに水を差したいわけでも、開催準備の足を引っ張りたいわけでも、ましてや政局を巡るポジショントークからでもありません。

私は、1970年の大阪万博や2005年の愛知万博にも、日本の現代史上において刮目すべき意義があったと考えていますし、今回の2025年大阪・関西万博にも「人・物・社会の持続可能な未来」を世界に示すという点から、大きな可能性を感じています。
また、本エントリで後述しますが、開催に関して適正な資本投下が行われれば、万博は有形無形の多大な効果を開催地にもたらすことも理解しています。

しかしながら、今回の大阪万博開催を巡っては様々な思惑や政局、利権が複雑に絡み合っており、現状の計画のままでは開催すら危ぶまれるのではないかと、強く危惧しています。

 

私には、二元代表制を採る地方議会議員としておかしいと思うことはおかしいと言う義務があると考えていますし、万博を主催する政府に対し与党所属議員として修正を促していくことにも意義があると信じています。

 

今後とも、2025年大阪・関西万博が成功裏に開催され、日本が再び浮揚する契機となれるよう微力を尽くして参りたいと存じます。

 

では、本題に入りたいと思います。
なお、本稿は昨年末に行われた堺市議会総務財政委員会での私の質問をベースにしております。
また、以下、特段の記述がない場合、「大阪万博」は「2025年国際博覧会」のことを指すとお考えください。

 

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2018年11月23日、パリで行われたBIE総会で2025年国際博覧会の大阪開催が決定しました。今後は、開催に向けた具体的な計画が練られていくことになりますが、実は開催決定は、招致から開催に至る工程のちょうど「中間地点」を超えた辺りに過ぎません。
参考までに愛知万博大阪万博の開催スケジュールを比較した表を作成したのでご覧ください。

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万博は開催が決定すれば、後は開催国で自由に計画を進めれば良いのではなく、実際の開催計画を改めてBIEに提出し開催登録承認を受けなければなりません。実際に会場の建設などを行うのはそれからで、愛知万博の場合、開催決定から登録承認まで実に3年半の年月かかっています。そしてその間に計画が大きく変更されたことは、前回エントリで詳しく書きました。

 

愛知万博では、組織の立ち上げから登録計画策定までに3年半、基本計画に1年、(恐らく)設計に1年、建設に2年半かかっています。名古屋市近郊の会場ですらこの工期でした。
夢洲(ゆめしま)」という、交通アクセスや生活インフラも整っておらず、埋め立て造成すら終わってない「島」で行われる大阪万博の会場建設は、さらなる難工事が予想されます。しかも愛知万博に比べてすでに約1年遅れのスタートです。当初からかなりタイトなスケジュールになっているのが現実です。

 

次に開催準備にかかる「お金」について、やはり愛知万博をひな形として検証したいと思います。

 

「2005年日本国際博覧会 公式記録」によると、愛知万博では総計2兆8000億円のインフラ投資が行われたとあります。一方、期間中の消費支出は4600億円、経済波及効果は7兆7000億円(将来的な効果や無形の遺産は含まず)に及んだと記されています。
2兆8000億円というのは、ちょうど大阪府の一般会計予算総額に相当します。万博という事業の凄まじいまでの規模が伝わってくる数字です。
BIE登録承認から会場竣工までは約4年間でしたので、粗い試算になりますが、1年間で約7000億円(2兆8000億円/4年)がインフラ整備に投入されたことになります。

 

ちなみに、大阪府の普通建設事業費は約1,900億円、大阪市のそれは約1,000億円(ともに/平成28年度決算)です。もちろん建設事業は地方自治体だけが負担するわけではありませんが、単純に国と府と市で等分したとしても愛知万博クラスのインフラ投資で年間2,333億円をどこかから持ってこなくてはいけない計算です。
私はこれらの数字を並べて見た時、正直めまいがするような不安感に襲われました。

 

しつこいようですが、私は海上で行う大阪万博の会場建設費は、確実に愛知万博よりかさむと考えています。愛知万博ではリニア鉄道やゴンドラが新設されましたが、大阪万博の海底トンネルを通る地下鉄や、橋の拡幅、海の埋め立てなどに比べれば大した工事ではないという印象すら受けます。
今の大阪にそこまでの体力があるでしょうか。緻密で丁寧な予算計画が求められます。

 

では、愛知万博ではこのような巨額のインフラ整備予算をどのように工面したのでしょうか?

 

愛知県のウェブサイトに「あいち 財政の概要」というファイルが公開されています。
万博開催から14年が経っているため、詳細なデータではありませんが、いくつか気になる数字が見て取れます。

 

まず自治体の借金にあたる「県債」ですが、万博の前後で発行額、残高ともに大幅に増加しています。最も古いデータは平成2年(1990年)でこれは誘致活動を開始した頃です。先述の年表の通り、開催決定は平成9年(1997年)で、開催は平成17年(2005年)です。
県債発行額は平成2年の918億円から平成9年には3,225億円と3.5倍に、残高は10,259億円から22,905億円と2.2倍に膨れ上がっています。自治体財政においてここまで急激に借金が膨らむことはあまり考えられませんが、当時それだけの支出が求められたということでしょう。

 

次に自治体の貯金にあたる「基金」について見てみましょう。
資料では平成2年に1,440億円あった取り崩し可能な基金が万博開催前後には111億円と10分の1以下にまで減少しています。建設事業用と考えられる基金は平成2年の時点で約1,200億円ありましたが、恐らくそれらをすべて使い切ったのだと考えられます。
また基金は、災害のような突発的な復旧事業に備える意味合いもありますので、これを使い果たしてしまうと急な出費に対応できなくなってしまいます。

 日々の借金は3.5倍、借金残高は2倍、貯金は10分の1に。
データを見る限り、当時、愛知県の財政はかなり危険な状態だったと私は感じます。

 

一方、大阪府基金の状況がこちらです。
基金の詳しい説明は省きますが、この内、ハード整備に使えそうなのは「公共施設等整備基金」447億と、府の基金ではありませんが松井知事が流用を明言している万博財団管理の「万博記念基金」が190億円くらいです。

財政状況が違うので単純に比較はできませんが、当時の愛知県よりかなり残高が少なく、愛知万博クラスの投資が求められれば、大阪府の財政はさらに苦しいものになるはずです。

 万博によって府民生活に影響が出るようでは本末転倒です。特に府議会には、今後しっかりと行政をチェックすることが求められるでしょう。

 

さて、暗い話ばかりではなく、7兆7000億円とされる経済波及効果について見ていきましょう。

 愛知万博関連の資本投下の恩恵を大きく受けた顕著な例があります。
万博会場となった長久手市です。

 

長久手市名古屋市の北西に位置する人口6万人の自治体です。愛知万博開催時は町(ちょう)でしたが、万博に合わせリニア鉄道が敷かれ、それまで鉄道空白地だった市内に一気に6つの駅が開業し、人口が急増します。会場周辺の道路整備や住宅開発も進み、2012年に市制施行し市になりました。

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「地域人口関連統計図表の収納庫」サイトより引用)

長久手市発展の象徴的なエピソードとして、私が思わず笑って(失礼)しまったくだりが、前回紹介した書籍「虚飾の愛知万博 土建国家『最後の祭典』アンオフィシャルガイド」にあります。

 

長久手町が万博会場に決まり、会場から排出される汚水を町の浄化センターで処理することになりました。排出される汚水の量は一日8,600トンと予想されましたが、町の処理能力は6,000立米(トン)しかありません。仕方なく県と町は、浄化センターの処理能力を18,000立米/日まで拡張したそうです。供用開始は万博開幕の3週間前だったということです。

 

道路、リニア、生活インフラ、跡地公園、ニュータウンなど、これらの万博レガシーは、結果としてその後の人口増を支えることとなり、長久手市名古屋市豊田市などのベッドタウンとして、その後の県全体の発展に大きく寄与しました。
やや好意的すぎる見方かもしれませんが、間接的には日本の自動車産業を支えたわけで、その後の日本経済の成長にもつながったと言えますし、愛知万博の「環境」というテーマが、世界最高の環境性能を持つ自動車の開発などにもつながっていったのかもしれません。(愛知万博協会の会長は豊田章一郎氏でした。)
私は万博への投資はこのように機能させるべきであると感じます。

 

今の大阪万博のコンセプトには、テーマ、会場、跡地を含めたレガシーの活用、未来への影響等において、それぞれの整合性や俯瞰的かつ長期的な視点が欠けています。
数兆円規模の投資が適切かつ有効に行われれば、その効果は(過去の万博がそうであったように)大げさではなく日本の将来を左右するほどの影響力を持ちます。
前述の通り、愛知万博では開催決定後の基本計画策定で内容がブラッシュアップされ、厳しい前評判を覆して成功を収めました。

 

今後は、大阪万博においても、政府が主導する形で登録基本計画が練られることになりますが、投資の効果が最大化されるような内容となるよう、まさしく日本の官民の叡智を結集して取り組む必要があります。

 

そのことを引き続き、開催地である大阪からしっかりと発信し、伝えてまいりたいと思います。