野村ともあき【非公式】ブログ|前堺市議会議員

野村ともあきの非公式ブログです。前堺市議会議員 公式ブログは→https://note.com/nomuratomoaki/

堺市議会で代表質問、常任委員会質問を行いました。

堺市議会平成31年第1回定例会が開会中です。

先のエントリーでお伝えした通り、今議会は会期冒頭、竹山市長の政治資金収支報告書を巡る問題が発覚し、大荒れのスタートとなりました。
4月に統一地方選挙を控えているのはもちろん、大阪府知事・市長のダブル選も不可避な状況となりつつあり、混沌とした空気の中で会期が進んでいます。先日、常任委員会が終了し、ちょうど折返し地点を過ぎたあたりですが、すでに通常の倍ほどの長さを感じています。
まだこれから予算審査特別委員会、市長の資金問題を集中して審議する議員総会、そして恐らく市長の進退が問われる最終本会議、と議会が続きます。
正直、先が見えません。

私は、先の代表質問、常任委員会、予算審査総括質疑、議員総会、(そして多分、最終本会議も議員提出議案に対する答弁もあるかも…)と、すべての機会で登壇することとなっており、選挙前ということも重なって間違いなく2期8年の議員経験の中で最も忙しい、というか“クレイジー”な状態で日々過ごしております(笑)。
まだまだこの先いくつもの山場がありそうですが、一旦ここでこれまでに行った質問をまとめておこうと思います。
推敲する余力もなくて、とりとめのない質問項目の羅列になっておりますが、ご容赦ください。


----
2月18日の、本会議大綱質疑初日に会派を代表して6項目の質問を行いました。
1問目は「市民の安全安心なくらしについて」。
昨年は6月に大阪北部地震、9月に台風21号と、大阪で大きな災害が連続して発生し、甚大な被害が生じました。これらの災害を受けて、堺市としてどのように予算編成行ったのか尋ねました。
堺市では、災害対応にあたる各地域の職員体制の見直しや高潮に対するハザードマップを作成するとのことです。私からは、確かに昨年の災害は大きな被害をもたらしたものの、今後予想されるさらに大きな災害に備え、今回の災害を得難い経験として生かすことを要望しました。

 

次に、「堺市の公共交通ビジョン」について当局の方針を確認しました。以前、ブログにも書いた通り、私は、ICT技術を基盤とした、自動運転、EV、IoT、シェアリング、高度交通システムなどの自動車関連技術の急速な進歩により、人々の「移動」に大きな変化が生じ、それらは公共交通という概念すら一変させると考えています。そのような見地から、各交通手段、機関を定義し直し、新たな公共交通体系を構築する必要性を訴えました。また、その中の重要な交通手段として、堺のアイデンティティでもある自転車を位置づけるよう提言しました。自転車を「公共交通」として捉え交通政策を立案している例はあまりないと思いますが、私はこれからの持続可能な都市経営には重要な視点であると確信しております。

 

三点目に「産業振興施策」について質問しました。
前項で質問した自動車が象徴的な例であるように、近い将来、我々の生活は数々の新たな技術革新によって一変すると言われております。第4次産業革命とも呼ばれるこの急激な変化に対応することは、特に製造業において企業の命運を左右する大きな課題です。しかし、堺市の産業は中小企業がほとんどで、その対応が進んでいるとは言えません。
そのような中、企業の先端技術導入を支援する「スマートものづくり導入支援」事業が予算計上されました。
先のIT革命がデジタルの革命だったのに対し、現在の変化はIT技術とものづくりの融合によって進んでいます。このことは、堺市の産業構造や歴史から見て非常に重要な意味を持ちます。
産業を振興し、経済を発展させ、社会を豊かにすることは、言うまでもなく公共部門としての自治体の重要な役割です。
本事業が将来的に堺市の基幹的な産業育成につながることに期待を込めました。

 

4問目は「堺市の文化振興ビジョン」について尋ねました。
いよいよ本年10月1日、堺市民芸術文化ホール「フェニーチェ堺」がグランドオープンします。計画から建設に至るまで非常に長い期間を要した本施設持つ意義、効果について、市長に確認しました。
振り返れば、今期の私の議員任期の間には、旧市民会館建て替えを巡る議論が多くありました。その議論の末に、近畿でも有数の文化と芸術の拠点となり得るホールが完成したことは、感慨もひとしおに感じます。

 

5問目の質問は「教員の働き方改革」について。
堺市の来年度予算には小学校プログラミング教育の必修化に向けた取り組みや、タブレット端末の導入、英語教育の推進など多くの新たな施策が挙げられています。これらの事業は必要かつ意義のあることだとは思いますが、学校や教職員に求められる技能や責任は増大する一方であり、現場で働く教職員の心身に重い負担をかけています。
私からは、特に授業以外の部分で負担を与えている業務に対し、専門的に対応する職員や体制の拡充を求めました。

 

最後に水道事業について取り上げました。
人口減少や高度成長期に整備した設備の老朽化、水道法の改正など、水道事業を取り巻く環境も大きく変化しています。
そのような中、大阪府下で進む水道の広域化の現状について質問しました。その答弁の中では、本年10月から水道料金の値下げを行うという具体的な方針も示していただきました。
私からは、設備の更新と事業のバランスをしっかりと見ながら、堺市が府下広域水道事業においてリーダーシップを発揮するよう要望しました。

 

----
続いて、所属する総務財政常任委員会では、新たに施行される「会計年度任用職員制度」についてと、市民に向けた「わかりやすい財政」について一般質問を行いました。

 

会計年度任用職員制度とは、これまであいまいだった非正規職員や臨時雇用職員の雇用を新たに「会計年度任用職員」として規定するものです。
これによりアルバイト職員にも賞与が支給されるなど、公務員においても同一労働同一賃金が進むこととなり、個人的には社会的に割と影響が大きい政府の方針転換であると捉えています。
しかしながら、現時点では国で財源についての方針が示されておらず、実際の収入増につながるかは不透明です。
施行は32年度からですが、私からは31年度の間に政官でしっかりと財源確保の要望を行うことを確認しました。

 

次に、「わかりやすい財政」についてわざわざ質問で取り上げたのは、町中で堺市の財政について誤解した意見をよく見聞きした経験からです。
自治体運営にとって「財政」は非常に重要ですが、なかな内容が難しく、またわかりにくさゆえに政治的なプロパガンダに利用されることも多く、市民さんの誤解が大きい分野のひとつです。
詳細は別稿に譲りますが、

  • 競争だけでは社会は成り立たないため公共の役割が必要であること。
  • 「社会資本整備」「(教育、福祉を含む)労働政策」「秩序維持政策(危機管理、治安維持、安全保障)」「司法」などは、民間事業や市場取引にはなじまない公共が担うべき役割であること。
  • 「財政」と「家庭の家計」や「企業の会計」は本質的に異なること。
  • 積極的な歳出は社会を豊かにすること。
  • 納税は納税者が利益を得るためのものであること。
  • 税金によって行われる事業は1年でも早く行われたほうが良いので、財政における「借金」はした方が良い場合もあること。
  • ただし、使い道は民主的に決められる必要があるので、公選職があること。

などを確認しました。
一面的に見れば、納税は自分のお金が取られることなので嫌なものです。しかし、税金と政府がなければ我々社会は発展しません。
これらをわかりやすく広報することは、社会的な安定を図る上で大変重要な取り組みであるので、財政当局の知恵を絞るよう要望いたしました。

 

----
さて、明後日7日からは、また予算審査特別委員総括質疑で質問に立ちます。
「代表質問」は予算に対し大綱的な質問を行うこととされてるのですが、特別委員会では一問一答形式で予算や事業施策の細かいところまで質問できるので、時間の制限はありますが、私の関心のある項目について詳細を質問したいと思います。

 

その後は12日に、竹山市長の政治資金問題について審議する議員総会が予定されています。
この問題は市長個人の政治資金の管理に関するもので、倫理的な問題や管理責任能力を問う必要性はあるものの、本来議会の審議にはなじまない内容です。初日本会議の緊急質問では円滑に議事が進まなかったこともあり、通常の本会議、委員会では予算審査に集中するべきという議論もあり、通常の議案審議とは別に、議員総会が開かれることになりました。
まずは8日に予定されている関連資料の提出を待ちたいと思います。

平成31年堺市議会第1回定例会が開会しました

本日、2月3月議会となる平成31年堺市議会第1回定例会が初日を迎えました。本来であれば初日本会議は「提案理由」の説明のみが行われるのが慣例ですが、先般報道された竹山修身市長の政治資金を巡る不明朗な処理に対し、自民党を含む全会派から緊急質問が出され、大変紛糾しました。指摘されている点は、故意ではないミスであったとしても批判を受けて仕方のないもので、市長には自ら「精査中」であると答弁した真相についてしっかりと説明を果たす責任があるでしょう。各会派からは、迅速な議会への報告を求める意見が出されましたので、この事案に対する市長の真摯な対応を待ちたいと思います。


--

緊急質問の後には、予算をはじめとする通常の議案の説明がありました。

今年度予算には評価すべき良い施策も多くあり、しっかりと当局と議論をしたいと考えておりましたが、多くの施策とは無関係な政治的な問題で、議会の審議がおろそかになるのは大変遺憾なことです。本来、市長個人の後援組織や政治団体と、行政の施策は分けて審議するべきと感じますが、倫理的な側面から市長自身に批判的な質問が飛ぶことは避けられず、今後の議会運営もすんなりとはいかないことでしょう。

実際、本会議後の議会運営委員会も議事運営に関して意見が百出し、長時間の会議となりました。

 


堺市議会議員選挙まであと一か月という微妙な時期でもあり混迷がどこまで進むのか、正直予想がつきません。

私自身はまずは来週の代表質問を行う予定ですので、努めて冷静に議会審議に臨みたいと思います。

 


この件、続報します。

陸上自衛隊信太山駐屯地の平成30年台風21号被災状況を視察

2月2日、岡下 昌平代議士に取り計らっていただき、南大阪の自民党の有志で、信太山駐屯地の台風21号被災した建物を視察しました。

実は、信太山駐屯地は先の台風で大きな被害を受けていましたが、半年近くが経った今もほとんど復旧が進んでいません。
駐屯地の成人式に出席した西川 良平 議員からこの惨状を知らされ、国に陳情するべく岡下代議士に相談したところ、この度の視察となりました。

f:id:nomuratomoaki:20190202172220j:imagef:id:nomuratomoaki:20190202172231j:imagef:id:nomuratomoaki:20190202172239j:imagef:id:nomuratomoaki:20190202172247j:image

実際に現場を確認すると想像以上の被害で驚きました。
被災箇所はほとんど被災した時のままの状態で、修繕も予算がないため、かろうじて材料の支給のみを受けて隊員らが自分たちで任務の合間をぬって行なっているとのことでした。信じられない話です。

災害の度に全国の被災地に派遣される身でありながら、自分たちの施設は修繕すらされず不自由な思いをしておられる隊員さんの生の声をお聞きして、本当に心が痛みました。

 

我々地方自治体は、災害派遣等で自衛隊に大変お世話になります。今後、党として、一刻も早い復旧がなされるよう、強く国に働きかけて参りたいと思います。

平成31年度堺市予算について説明を受けました。

いよいよ平成31年堺市予算を審議する今年最初の堺市議会定例会が2月12日~3月14日の会期で行われます。

 

昨日1月30日、市当局から予算案の概要について説明を受けました。まだ予算書は示されていませんが、これからしっかりと内容を読み込み、施策・事業の精査を行いたいと思います。

 

ご承知の通り、本年は「改元」があり、日本は新たな時代を迎えますが、ここ堺市におきましても、7月の百舌鳥古市古墳群世界文化遺産登録や、秋の堺市民芸術文化ホール「フェニーチェ堺」のオープンなど、新時代の幕開けを象徴するかのように多くの社会的な催事、行事が控えており、それらに関連する予算も多く計上されています。

 

我々議員にとりましても、この定例会は今任期最後の議会となりますので、しっかりと審議に臨みたいと思います。

袋小路に入った都構想議論~第19回大都市制度(特別区設置)協議会 雑感(動議全文掲載)

昨日行われた、大阪市の廃止と特別区の設置について協議する「法定協議会」が紛糾し、各種メディアでも大きく報道されています。
私は事前に法定協の委員さんから「今回の会議が山場」と聞いていたので、傍聴に行っておりました。

「山場」というのは、「いわゆる都構想」の制度設計を行うための時間的余裕がないという作業工程的な意味と、成立のために協力が不可欠な立場にある公明党さんがどのような態度をとるのかという政局的な意味の両方があります。

 

会議は朝9時30分から大阪市役所で行われました。
会議の冒頭、いきなり公明党の委員さんが「動議」を出します。
内容は「今回の会議が、会長の独断で強引に開催されたことに強く抗議し、本日は散会する」ことを提案するものでした。(動議の全文を最後に追記しました)

 

動議の中では他に

  • 「制度の協議のために必要な、庁舎整備、職員体制、財政制度などに対する回答がない」
  • 「強引な会議の開催は期限ありきで、また我々は『議員の任期内』に協定書をまとめなければならないといった合意や約束はしていない」
  • 政令市を解体するという極めて重要なテーマには、慎重かつ丁寧な議論が必要である」
  • 特別区の設置には1500億円を超える莫大な財源が必要で、住民サービスの低下は明白である」
  • 「よって真摯な議論ができる法定協の正常化を強く求める」

と述べられています。
私は発言を聞いていて至極正論であると感じました。

 

しかし、今井豊会長(維新の会選出)は動議の採決を拒否し、一気に会議は紛糾します。採決を求める公明・自民と会議の続行を求める維新の間で押し問答が続き、約40分もの間、膠着状態が続きました。

 

発言が整理されず怒号も飛び交う中でよく聞き取れませんでしたが、公明党が動議の採決を強く求めたのは、以前の法定協(恐らく第11回のことと思われる)で動議の持ち帰りを提案した公明党に対し、維新側から「動議は緊急性があるものだからすぐに採決すべき」といったやり取りがあったことが根拠であると考えられます。
対して維新側は、特に松井知事が「協議をやるといって出席したんだから協議に応じろ」と繰り返し主張し、さらに自民党からは「出席しなかったらしなかったでボイコットしたと非難されるから、出席した上で正当な規則に則って動議を出しているのだ」という趣旨の発言があったかと思います。

 

この流れを会長は議事整理できず、松井知事が一言「もう散会にしたら?」ともらした瞬間、ほとんど自暴自棄のように、一方的に「散会」を宣告しました。

 

私は、この時点で会議は終了したものと判断してますが、散会宣告後も委員は誰も席を立たず、会議が成立しているのかしていないのかよくわからない時間が続きます。議事運営のルールなどない中、議論が深まるはずもなく、結局、いったん「休憩」ということになり、休憩再開後、会長から「動議は適格性を欠くため採決せず、会議は散会する」と、これまた一方的に散会が宣告され、全委員が会議場を立つことになりました。

以上が会議の流れです。

 

当初議論する予定だった制度については、具体的なことは何も決まりませんでしたが、維新と公明党の対立は決定的となり、議会の構成から、今後「いわゆる都構想」の制度案がまとまる可能性は極めて低くなりました。

 

会議はほとんどが怒鳴り合いに近いものでしたので、どちらが正しいかは、もう見た人の感じ方でしかないとしか言いようがありません。
私自身は会長の議事整理の仕方が悪かったと感じましたが、維新支持者の方からすれば、自公側が会議を潰したと見えているであろうことも理解しています。
もうすでに何度も経験してきた対立構図です。

 

「いわゆる都構想」に関しては、これまでかれこれ9年くらい議論が続けられてきました。
その中で制度としてはほとんど破綻しているのは明らかで、数字を調整したくらいでは、欠陥を克服することは不可能です。
もう「都構想」に関しては、政策的な観点からも、政局的な影響からも、建設的な議論は不可能だと、今回の法定協を傍聴して強く感じました。
万博等のビッグイベントが控える中で、まだこのような不毛な議論を続けなければならないことに、暗澹たる思いがします。

 

-----
第19回法定協 動議(全文)
●1月11日の法定協議会において、私たちから、「代表者会議で協議せず、会長の独断によって一方的に法定協開催が通知されるような異常事態は、二度となきよう求めた」にもかかわらず、今回も忠告を完全に無視して、強引な手法で法定協が開催されました。
よって、私たちは断固抗議し、会長には独断で強引な手法を改めて頂き、「法定協を正常化することを求め、本日は散会する」動議を提出します。

●私たちは、これまでの協議会で庁舎整備や職員体制、財政調整制度等、協定害の根幹にかかわる重要な項目に対して指摘してきました。
にもかかわらず、いまだに、まったく回答がない。要するに、大阪市を廃止して、特別区を設置するコストが、本当はいくらになるのか確認できない状況では、とうてい委員間協議に入ることはできません。

●先日来の強引な開催は、すべて、議員の任期内に協定書を取りまとめたい、との知事の一方的な主張から推し進められています。しかし、協定書を議員の任期内にまとめなければならいとは、どこにも規定されておりません。
また、私たちは、そのような公約を掲げて、議員になったわけでもありません。
法定協は、府市両議会で廃止を議決しない限り、4月以降も存続し、議論を継
続することが可能です。よって、議員の任期内に協定書をまとめなければならないという知事の発言には、全く根拠がありません。
さらに、我々は、議員の任期内に協定害をまとめる、といった、合意や約束をしたことは一度もありません。法定協の場で、断言しておきます。

●一番大事なことは、どこまでも府民・市民の立場に立って考え、府民・市民の皆様の理解が十分に得られるよう、慎重かつ丁寧な議論を進めていくことです。
それこそが、法定協の委員である、我々の使命であり責任です。

特別区設置をするか否かの議論は、日本で初めて政令市を解体するという極めて重要なテーマであり、どれだけ慎重に議論をしても、し過ぎることはありません。

特に、特別区設置には、1,500億円を超える莫大な財源が必要です。
その捻出には、平成の大合併のような合併特例債といった国からの支援も全くないため、そのほとんどを現在の大阪市の税収から捻出しなければなりません。
今、大阪市が行っている他市にはまねのできない極めて手厚いサービスである、「敬老パス」や、高校生までの「子ども医療費助成制度」などをすべて廃止しても全く財源は足りない。その結果、今後の市民生活に大きな影響を与え、住民サービスが低下することは明白です。
●したがって、特別区になれば、住民サービスがどうなるのかを明確にする法定協議会の開催、メリットもデメリットも真摯に議論ができる「法定協議会の正常化」を強く求め、本日は散会する動議を提出します。

●会長に於かれましては、速やかに採決をお願いします。
公明党 八重樫善幸委員)以上。

大阪市立大学との統合に伴う大阪府立大学中百舌鳥キャンパスの移転には反対です。

大阪府立大学は、官立の獣医学、農学、工業、青年師範学校などを母体として、1949年に新制大学である「浪速大学」として発足しました。伝統的に獣医学、農学、工学の分野に強みを持ち、現在では生命科学情報工学、物理化学などに学域を広げています。
起源となる獣医学講習所が創立された1883年から現在に至る130年以上の歴史の中で、膨大な研究成果が蓄積されており、その沿革からわかる通り、まさしく堺市における「知の集積拠点」として、地域に計り知れない知的恩恵をもたらしてきました。

 

その府立大学が現在、「二重行政の象徴」として大阪市立大学との統合・移転の憂き目にあっています。

 

私は府立大学が立地する地域の選出議員として、統合・移転の問題が出てから、幾度となく議会質疑等を通じて、大学また中百舌鳥キャンパスの存続を訴えかけて来ました。この問題については堺市議会で一番取り上げてきた自負があります。

 

昨年30年2月の大阪市会で、大阪市の吉村洋文市長は公明党議員の質問に対し、「府大と市大の統合にあたってはキャンパスを集約し、森之宮が移転の有力な候補地である」「同種の学部学科は集約を検討する」「新キャンパスの建設費用は、既存キャンパスの土地の売却益等を財源とする」旨の答弁を行いました。

 この答弁は多くの関係者にとって寝耳に水の発言で、二大学の統合・移転ありきで話がされていることに、私も非常に驚きました。

大阪市会 会議録検索
http://search.kaigiroku.net/kensaku/city-osaka/menu.html

(平成30年1月、2・3月定例会常任委員会(都市経済)-02月16日)

 

府大市大の統合議案は、平成29年9月に大阪府議会で可決された後、大阪市会では継続審議となっていたものでしたが、結果的にはこの2月議会で大阪維新の会公明党による賛成多数で可決され、本年(2019年)4月から新法人に統合されることになりました。

このことは地元にとってはかなり大きなニュースなのですが、大阪市内のことなので、堺市の議員等で問題提議する人はあまりいませんし、堺市民もほとんど知らないのではないかと思います。

私は、大阪府立大学中百舌鳥キャンパスの移転ありきで話が進んでいることに強い焦燥感を覚えています。

 

SNSなどに何度か書いたことですが、私はそもそも「大学を減らす」ことが『改革』なのかという点に、大きな疑問を持っています。


都市にとって大学は「無駄な施設」なのでしょうか?

 

府市二つの大学は、創設の経緯や、建学の理念、校風などが異なり、それぞれの歴史や伝統を持っています。また、同じ学部学科でも、それぞれ強みや研究成果を持つ分野は大きく異なります。

志願者数においても両大学ともに倍率が1.0倍を切ることはなく、学部を絞ったり入学定員を削減することは志望者の学ぶ機会を著しく奪うことになりますし、(よく理由にされる)経営の観点からもマイナスです。


ここで、大阪府と近隣府県の公立大学の数を比較してみましょう。

f:id:nomuratomoaki:20190122135257j:plain
ご承知の通り、大阪府は近畿の中でも飛び抜けて人口の多い都市です。しかし、表の通り、人口に対して(国)公立大学の数は最も少なくなっています。人口割合ではなく絶対数でも、和歌山県以外の府県より少ないという状況で、大阪の大学環境は極めて貧弱であることが一目瞭然です。(なお、この傾向は私立大学を含めても同様です。)

大学を誘致できるなら誘致したいという自治体もある中で、なぜ優秀で学費も安く人気も高い、歴史も伝統も実績もある公立大学を減らなさなければならないのでしょうか。理解に苦しみます。

 

大学は、それぞれの地域における、まちづくり、産業、学術研究の拠点として、不可欠な施設です。堺市にとっても、大阪府立大学中百舌鳥キャンパスは、歴史的に見ても現在においても、絶対に必要な存在であることは強く訴えておきたいと思います。

 

府大市大の統合については、そのスキームにおいても課題が多く、作業が難航していると聞きます。「大阪市をなくす前提の都構想」がここにも影を落としています。
皮肉なことに、その間に各大学における様々な改革は進み、成果も上がって来たと言います。都構想議論全般に言えることですが、要するに膨大なコスト(ヒト・金・時間)をかけて効果が不明な大学統合などしなくても、改革はできるということです。
展望なき政治判断によって学問や研究分野の方々が振り回されるのは本当に気の毒でなりません。

 

我々自由民主党大阪府議会議員団を中心に、新大学法人設立後もそれぞれの大学を残す「1法人2大学」を主張しております。
個人的には法人の統合も不要だと思いますが、すでに決定してしまったことなので、せめて大学組織だけは2大学が堅持されるよう、これからも立地自治体の議員として働きかけを行ってまいるとともに、中百舌鳥キャンパスの移転には強く反対していく所存です。

その4 2025年大阪万博 開催に向けての課題 ~2005年 愛・地球博を振り返る(投資と経済効果編)

年末年始をまたいで少し間が開きましたが、「大阪万博開催に向けての課題 その4」について書きたいと思います。

本ブログでは、「その1」で会場建設等ハード整備上の課題について、前々回「その2」では開催計画などのソフト面の課題、そして前回エントリ「その3」では今回の大阪万博ロールモデルとした2005年の愛知万博がどのようにして開催に至ったのかを振り返りました。

 

本ブログの中で何度も繰り返し言って来ましたが、私は万博開催に「賛成」です。
私がこれらの課題を指摘し続けるのは、祝賀ムードに水を差したいわけでも、開催準備の足を引っ張りたいわけでも、ましてや政局を巡るポジショントークからでもありません。

私は、1970年の大阪万博や2005年の愛知万博にも、日本の現代史上において刮目すべき意義があったと考えていますし、今回の2025年大阪・関西万博にも「人・物・社会の持続可能な未来」を世界に示すという点から、大きな可能性を感じています。
また、本エントリで後述しますが、開催に関して適正な資本投下が行われれば、万博は有形無形の多大な効果を開催地にもたらすことも理解しています。

しかしながら、今回の大阪万博開催を巡っては様々な思惑や政局、利権が複雑に絡み合っており、現状の計画のままでは開催すら危ぶまれるのではないかと、強く危惧しています。

 

私には、二元代表制を採る地方議会議員としておかしいと思うことはおかしいと言う義務があると考えていますし、万博を主催する政府に対し与党所属議員として修正を促していくことにも意義があると信じています。

 

今後とも、2025年大阪・関西万博が成功裏に開催され、日本が再び浮揚する契機となれるよう微力を尽くして参りたいと存じます。

 

では、本題に入りたいと思います。
なお、本稿は昨年末に行われた堺市議会総務財政委員会での私の質問をベースにしております。
また、以下、特段の記述がない場合、「大阪万博」は「2025年国際博覧会」のことを指すとお考えください。

 

-----
2018年11月23日、パリで行われたBIE総会で2025年国際博覧会の大阪開催が決定しました。今後は、開催に向けた具体的な計画が練られていくことになりますが、実は開催決定は、招致から開催に至る工程のちょうど「中間地点」を超えた辺りに過ぎません。
参考までに愛知万博大阪万博の開催スケジュールを比較した表を作成したのでご覧ください。

f:id:nomuratomoaki:20190109173425j:plain



万博は開催が決定すれば、後は開催国で自由に計画を進めれば良いのではなく、実際の開催計画を改めてBIEに提出し開催登録承認を受けなければなりません。実際に会場の建設などを行うのはそれからで、愛知万博の場合、開催決定から登録承認まで実に3年半の年月かかっています。そしてその間に計画が大きく変更されたことは、前回エントリで詳しく書きました。

 

愛知万博では、組織の立ち上げから登録計画策定までに3年半、基本計画に1年、(恐らく)設計に1年、建設に2年半かかっています。名古屋市近郊の会場ですらこの工期でした。
夢洲(ゆめしま)」という、交通アクセスや生活インフラも整っておらず、埋め立て造成すら終わってない「島」で行われる大阪万博の会場建設は、さらなる難工事が予想されます。しかも愛知万博に比べてすでに約1年遅れのスタートです。当初からかなりタイトなスケジュールになっているのが現実です。

 

次に開催準備にかかる「お金」について、やはり愛知万博をひな形として検証したいと思います。

 

「2005年日本国際博覧会 公式記録」によると、愛知万博では総計2兆8000億円のインフラ投資が行われたとあります。一方、期間中の消費支出は4600億円、経済波及効果は7兆7000億円(将来的な効果や無形の遺産は含まず)に及んだと記されています。
2兆8000億円というのは、ちょうど大阪府の一般会計予算総額に相当します。万博という事業の凄まじいまでの規模が伝わってくる数字です。
BIE登録承認から会場竣工までは約4年間でしたので、粗い試算になりますが、1年間で約7000億円(2兆8000億円/4年)がインフラ整備に投入されたことになります。

 

ちなみに、大阪府の普通建設事業費は約1,900億円、大阪市のそれは約1,000億円(ともに/平成28年度決算)です。もちろん建設事業は地方自治体だけが負担するわけではありませんが、単純に国と府と市で等分したとしても愛知万博クラスのインフラ投資で年間2,333億円をどこかから持ってこなくてはいけない計算です。
私はこれらの数字を並べて見た時、正直めまいがするような不安感に襲われました。

 

しつこいようですが、私は海上で行う大阪万博の会場建設費は、確実に愛知万博よりかさむと考えています。愛知万博ではリニア鉄道やゴンドラが新設されましたが、大阪万博の海底トンネルを通る地下鉄や、橋の拡幅、海の埋め立てなどに比べれば大した工事ではないという印象すら受けます。
今の大阪にそこまでの体力があるでしょうか。緻密で丁寧な予算計画が求められます。

 

では、愛知万博ではこのような巨額のインフラ整備予算をどのように工面したのでしょうか?

 

愛知県のウェブサイトに「あいち 財政の概要」というファイルが公開されています。
万博開催から14年が経っているため、詳細なデータではありませんが、いくつか気になる数字が見て取れます。

 

まず自治体の借金にあたる「県債」ですが、万博の前後で発行額、残高ともに大幅に増加しています。最も古いデータは平成2年(1990年)でこれは誘致活動を開始した頃です。先述の年表の通り、開催決定は平成9年(1997年)で、開催は平成17年(2005年)です。
県債発行額は平成2年の918億円から平成9年には3,225億円と3.5倍に、残高は10,259億円から22,905億円と2.2倍に膨れ上がっています。自治体財政においてここまで急激に借金が膨らむことはあまり考えられませんが、当時それだけの支出が求められたということでしょう。

 

次に自治体の貯金にあたる「基金」について見てみましょう。
資料では平成2年に1,440億円あった取り崩し可能な基金が万博開催前後には111億円と10分の1以下にまで減少しています。建設事業用と考えられる基金は平成2年の時点で約1,200億円ありましたが、恐らくそれらをすべて使い切ったのだと考えられます。
また基金は、災害のような突発的な復旧事業に備える意味合いもありますので、これを使い果たしてしまうと急な出費に対応できなくなってしまいます。

 日々の借金は3.5倍、借金残高は2倍、貯金は10分の1に。
データを見る限り、当時、愛知県の財政はかなり危険な状態だったと私は感じます。

 

一方、大阪府基金の状況がこちらです。
基金の詳しい説明は省きますが、この内、ハード整備に使えそうなのは「公共施設等整備基金」447億と、府の基金ではありませんが松井知事が流用を明言している万博財団管理の「万博記念基金」が190億円くらいです。

財政状況が違うので単純に比較はできませんが、当時の愛知県よりかなり残高が少なく、愛知万博クラスの投資が求められれば、大阪府の財政はさらに苦しいものになるはずです。

 万博によって府民生活に影響が出るようでは本末転倒です。特に府議会には、今後しっかりと行政をチェックすることが求められるでしょう。

 

さて、暗い話ばかりではなく、7兆7000億円とされる経済波及効果について見ていきましょう。

 愛知万博関連の資本投下の恩恵を大きく受けた顕著な例があります。
万博会場となった長久手市です。

 

長久手市名古屋市の北西に位置する人口6万人の自治体です。愛知万博開催時は町(ちょう)でしたが、万博に合わせリニア鉄道が敷かれ、それまで鉄道空白地だった市内に一気に6つの駅が開業し、人口が急増します。会場周辺の道路整備や住宅開発も進み、2012年に市制施行し市になりました。

f:id:nomuratomoaki:20190109171729p:plain

「地域人口関連統計図表の収納庫」サイトより引用)

長久手市発展の象徴的なエピソードとして、私が思わず笑って(失礼)しまったくだりが、前回紹介した書籍「虚飾の愛知万博 土建国家『最後の祭典』アンオフィシャルガイド」にあります。

 

長久手町が万博会場に決まり、会場から排出される汚水を町の浄化センターで処理することになりました。排出される汚水の量は一日8,600トンと予想されましたが、町の処理能力は6,000立米(トン)しかありません。仕方なく県と町は、浄化センターの処理能力を18,000立米/日まで拡張したそうです。供用開始は万博開幕の3週間前だったということです。

 

道路、リニア、生活インフラ、跡地公園、ニュータウンなど、これらの万博レガシーは、結果としてその後の人口増を支えることとなり、長久手市名古屋市豊田市などのベッドタウンとして、その後の県全体の発展に大きく寄与しました。
やや好意的すぎる見方かもしれませんが、間接的には日本の自動車産業を支えたわけで、その後の日本経済の成長にもつながったと言えますし、愛知万博の「環境」というテーマが、世界最高の環境性能を持つ自動車の開発などにもつながっていったのかもしれません。(愛知万博協会の会長は豊田章一郎氏でした。)
私は万博への投資はこのように機能させるべきであると感じます。

 

今の大阪万博のコンセプトには、テーマ、会場、跡地を含めたレガシーの活用、未来への影響等において、それぞれの整合性や俯瞰的かつ長期的な視点が欠けています。
数兆円規模の投資が適切かつ有効に行われれば、その効果は(過去の万博がそうであったように)大げさではなく日本の将来を左右するほどの影響力を持ちます。
前述の通り、愛知万博では開催決定後の基本計画策定で内容がブラッシュアップされ、厳しい前評判を覆して成功を収めました。

 

今後は、大阪万博においても、政府が主導する形で登録基本計画が練られることになりますが、投資の効果が最大化されるような内容となるよう、まさしく日本の官民の叡智を結集して取り組む必要があります。

 

そのことを引き続き、開催地である大阪からしっかりと発信し、伝えてまいりたいと思います。