野村ともあき【非公式】ブログ|前堺市議会議員

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大阪の政治の現場で今起きていることの続報

(※本記事は2014年7月31日時点の内容です)
前回(正確には前々回)のエントリでは、大阪の政治の現場を巡る混乱についてお伝えをしました。現在の大阪の由々しき政治状況を、少しでも東京をはじめ他の地域の方々にも知っておいて欲しいという思いでエントリを書いたところ、多くの反響をいただきました。
ここ1週間ほどは、在阪マスコミもこの一連の問題をテレビや新聞で大きく扱うようになり、世間の関心も高まって来ているのを感じます。
正直、こんな無茶苦茶なことはそうそう起きないだろうと思っていたのですが、あれから3週間あまりが経ち、事態は一層混迷の度合いを深めています。


7月23日、第17回大阪府大阪市特別区設置協議会(法定協)が開催され、維新のみの委員によって協定書が決定されました。
私が7月10日にアップした前回のエントリに書いた通り、松井知事と維新の岡沢府議会議長は議会の開会を期限いっぱいの7月25日まで引っ張った上で、そのわずか2週間の間(7/9〜7/23)に、5ヶ月に渡って開催を放置してきた法定協を維新の委員のみで3回開き、ほとんど議論や意見を交わすこともなく極めてずさんな形で協定書の内容を決定してしまったのです。


○協定書案の「現物」はこちらです。
http://www.city.osaka.lg.jp/toshiseidokaikakushitsu/cmsfiles/contents/0000275/275299/shiryou3.pdf


協定書で示された「大阪都」の最終形は、当初のうたい文句とは大きくかけ離れた、歪(いびつ)で中途半端な、異様な自治体の姿でした。


ニアイズベターをうたった特別区は、人口規模が当初計画の30万人から最大69万人に増大。しかも府下には政令市である堺市を抱えたままです。一方で議会議員は現在の大阪市会の議員数を元に機械的に各区に振り分けたため、34万人の湾岸区に12人の議員しかいない状況となりました。
区役所庁舎は不足し新設が必要で、初期コストは当初想定の3倍以上に膨れ上がり、発足時には職員の配置もままならないと言われています。
特別区間の税収格差は最大2.8倍に上るが、それを補う財政調整の方法は決まっていません。
大阪都にする最大の理由として喧伝された年4000億円の財政効果額は実質200億円以下に過ぎませんでした。
などなど。


羊頭狗肉とはまさにこのことです。


閑話休題
7月25日、法定協で協定書が決定された2日後、大阪府臨時議会が招集、開会されました*1。前エントリに書いたとおり、この臨時議会は法定協議会の委員を議会の議席に応じて選出し直す条例の提案が目的でした。しかし両首長は条例案が可決しても再議(審議のやり直し)に付して廃案にすることを明言していました。そこで野党会派は一案を練り「議会会議規則」において協議会などの委員を議会の会派構成に応じて選出する改正案を同時に提案するということを画策しました。


大変テクニカルな話ですが、首長が再議に付した議決のうち、予算や条例については再議決に3分の2の以上の議決が必要となりますが、それ以外の議決に関しては過半数で再議決できます。府議会の構成は、維新以外の議員は過半数を超えてますが、3分の2には足りていません。よって条例案は再議によって否決されても、会議規則の改正案については可決され、法定協の委員は元に戻せるはずでした。
以下、当日の府議会の動きです。


25日午前11時、まず「大阪府議会における大阪府大阪市特別区設置協議会委員の推薦手続に関する条例」案が提出されました。提案理由の説明や質疑の後、午後2時に条例案はいったん可決されます。しかし午後4時、松井知事が条例案を再議に付し、審議と採決はやり直しとなりました。午後10時、再議の結果、賛成は3分の2に届かず条例案は廃案となります。
本来ならここで「会議規則」の改正案の審議に移るはずでしたが、先ほどの再議の審議の際、質問に立った公明党議員の発言*2に問題があったとして暫時休憩となり審議がストップしました。
結局、岡沢議長は議会を再開させないまま時間が過ぎ、日付が変わる直前の午後11時50分、「7月25日 一日間」と定められた会期の延長を、維新が過半数を占める議会運営委員会で否決してしまいました。当然、維新以外の会派は反発しましたが、そのまま午前0時を迎え議会は自然閉会(流会)となります。


維新以外の会派はすぐさま臨時議会の再招集を知事に要請しようとしますが、なんと午後10時30分に知事はすでに退庁していて、この時点で庁内にいなかったそうです。
議会開会中に知事が帰ってしまうというのも、もうなんというか“すごい”話としか言いようがありませんが、再議が終われば後は規約改正議案を審議拒否して流会させることがあらかじめ決まっていたのかと疑ってしまうような行動です。
結局、この議会開催要請も松井知事は拒否し応じる意思はないようです。


さて、今回も長いエントリになってしまいました。
本来であれば、今回書いた出来事の一つひとつが“あり得ない”ことなのです。前回も触れましたが、首長による再議権の行使自体が府議会では過去になかったことでした。それが常態化していることに異常さを感じます。


大阪都構想が政策的に効果のない失敗プロジェクトであることは誰の目にも明らかになりつつあります。
このまま都構想を進めてしまうことは、都構想が日本の地方自治史上例のない大きな制度変更であるがゆえに、大阪府のみならず日本の国にまで影響を及ぼします。
手段が目的化し、なりふり構わぬ暴走を続ける維新の会を何とか止めなければなりません。
良識ある大阪維新の会の議員にも希望を持ちたいと思います。


この事実が少しでも多くの方の目に耳に入れば、ブログを書く意義も感じられます。今後も主張を続けたいと思います。

*1:同日大阪市でも臨時議会が招集されましたが話がややこしくなるのでここでは言及しません

*2:「鯛は頭から腐ると言いますが、まさに浅田会長こそが腐っているからこそ法定協が腐っているのです」という発言だそうです。