野村ともあき【非公式】ブログ|前堺市議会議員

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「地方創生」の時代に、堺市に求められるもの

今年の年頭に、街頭配布限定で出したチラシの記事が読みたいというお声を複数ちょうだいしましたので、ウェブに再掲します。チラシの現物は配りきったのでもうありません。すみません。

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【特別寄稿】「地方創生」の時代に、堺市に求められるもの


安倍政権による2年間の政策によって、今、日本経済は力強く回復の歩みを進めています。株価、賃金、雇用など様々な経済指標からもその流れは確かなものになろうとしています。しかし一方で、アベノミクスに対する批判が存在するのも事実です。それらは「アベノミクスは大企業だけのもの」「個人には景気回復の実感がない」と言った内容ですが、大企業から中小企業、そして個人へと景気回復の波が及ぶのには、ある程度の時間がかかるのはやむを得ません。統計上の経済と実態経済に時間的乖離が生じるのは当然のことで、アベノミクスの恩恵を最初に受けたグローバルな大企業の利益が国内に循環するまでには、賃上げや人々の心理面などを考慮しても少なくとも1年以上の時間がかかります。もちろん、その回復のスピードをより一層早めるための対策は重要です。


■日本の産業モデルが通用しなくなった
戦後、日本を支えてきた製造業の産業構造は、21世紀に入り、特に世界市場において大きく様変わりしました。いわゆる垂直統合型からグローバルな水平連携モデルへの変化です。米アップルのような製造部門を切り離すことで大きな利益を生む欧米企業が躍進する一方、日本国内の企業は「大企業を支える中小企業」という関係を守ろうとしたため、国際競争の舞台で苦しむことになりました。それが高度成長以後における日本企業低迷の要因です。しかし近年、一部の日本企業は垂直統合でしか成し得ない特化した技術による製品の開発に活路を見出そうとしました。そしてそれはようやく実を結ぼうとしています。
アベノミクス「第3の矢」は、まさしくこの日本が最も強みを発揮できる「誰にも真似できない独自の技術革新=イノベーション」を後押しするための戦略なのです。


■地方こそ日本経済を支える重要な柱
しかし一方で、グローバルな大企業がもたらす経済効果は地方に根ざしたローカルな産業には直接波及しないという点には注意が必要です。ローカルな産業とは、その地域に密着しなければ事業が行えない対人型のサービス業や福祉事業、公共交通などのことです。グローバルな企業が国際舞台で戦うための戦略と、地域に根ざした産業の振興とでは全く別のアプローチが求められます。


統計によれば、グローバルな大企業が日本国内にもたらすGDPや雇用は実は30%程度に過ぎず、他方ローカルなビジネスのそれは60%〜70%に達するということです。地方の再生を模索するとき、この視点は極めて重要といえるでしょう。国内、特に地方においては、ローカルなビジネスの成長戦略こそが重要なウェイトを占めているのです。
この点においてもアベノミクス第3の矢は、新たな産業の創出を図るとともに既存産業を成長産業化することで、その地域の女性、若者、高齢者の雇用を促進し「地方創生」へとつなげることを志向しています。
グローバルな戦略と「地方創生」は背反するものではなく、平行して進められるべきものです。日本全体をけん引しながら底上げする。それらが融合し両輪となって大きな推進力を発揮した時こそが、真の日本経済の復活となるでしょう。


■「地方創生」戦略と堺市の進むべき道
さて、この方向性は堺市の将来にとっても大変重要です。
堺市にはグローバルな大企業はほとんどありません。まさしく地元に根差した産業が地域経済を支えています。アベノミクス第3の矢が堺市に届いたとき、新たな産業の担い手になる人材を惹きつけ、市内に人口を誘導することは重要な戦略です。そのために必要なことは何でしょう。それは堺市が魅力ある都市となることです。
魅力の要素は様々です。イメージが良いだけではなく、交通の利便性や良好な住環境、余暇の過ごし方、治安、教育、子育て、医療、介護や福祉の充実なども都市の魅力として挙げられるでしょう。


私はこの考え方が、新たな時代を迎えようとしている堺市における都市経営戦略の最も重要な柱であるとの認識に立ち、これまで堺市に「人を集めるための取り組み」を要望してきました。議会での質問もこのテーマがすべてに通底しています。良好な環境が人を集め、産業が振興し、まちが成長するのです。


堺市東区は良好な住環境としての整備を。
では、私たちの住む東区はどのような位置づけになるでしょうか。
東区にはこれといった産業はありません。しかし、堺市の7つの区の中で最も優れた(少なくとも私はそう考えています)住環境があります。のどかな農村地帯も、閑静な住宅街も、市街地に近接した形で存在する稀有な立地を誇っています。堺市の中でこの地域が担うべきは「豊かな住空間」であることは間違いありません。
東区で生まれ育った私は、これまで40年間、地域のうつり変わりを見続けてきました。冒頭述べたように、世界の変化は激しいですが、私はこの愛すべきふるさとを未来の子どもたちに伝えて行きたいと心の底から願っています。
その一端を担うことのできる堺市議会議員という職をいただいたことに感謝をしています。


以上。


参考文献:「なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略」(冨山和彦 著/PHP新書)