野村ともあき【非公式】ブログ|前堺市議会議員

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熊本市視察レポート

10月31日~11月2日、「全国指定都市問題研究会」の勉強会で熊本市を訪問してきました。主に、昨年発生した熊本地震の復興事業の進捗と中心市街地の開発について視察をさせていただきましたので、感じたことなどを記しておきたいと思います。


現在、熊本市では、熊本城の南東に広がる中心市街地において、複数の開発プロジェクトが進行中です。代表的なものとしては、熊本城天守閣の復旧改修事業、桜町地区再開発と熊本城ホールの整備、JR熊本駅周辺整備、熊本市民病院の再建などがあります。どれも数十億円から数百億円の予算をかけたビッグプロジェクトですが、驚くのはこれらの計画がほぼすべて平成31年(2019年)に事業完了、竣工することです。


熊本市では「中心市街地活性化基本計画」を3期に分けて、熊本城築城400年に当たる平成19年から進めてきました。その間、平成23年には九州新幹線の全線開通、平成24年には政令指定都市への移行という大きな出来事があり、それらに合わせて熊本城本丸御殿の復元や観光・商業の複合施設である城彩苑の開業、閉店した百貨店跡地の再開発などの計画を段階的かつ、非常に戦略的に展開してきました。昨年、熊本地震によって大きな被害が出た後も、市長と議会で激しい議論があったものの、各計画を修正しながら、継続することになったということです。


※「中心市街地活性化基本計画」の詳細は熊本市のウェブサイトを御覧ください。

熊本市中心市街地活性化基本計画(熊本地区) / 熊本市ホームページ


私が特に驚いたのは「桜町・花畑地区整備事業」です。
熊本城の南東に位置する桜町・花畑地区は、かつては細川家の国許屋敷であった30,000平米の広大な地域です。現代に入って公園、バスターミナル、百貨店などが整備されていましたが、その地域を一体的に再開発することで、ホール、MICE機能、ホテル、商業施設、住居機能、一日の発着台数6000台(!)のバスターミナル、シンボルプロムナード、市民広場……等々を備えた、まさしく市の中心となるエリアを創出しようと、官民が一体となって計画が進められています。
総事業費は755億円(あべのハルカスと同規模)、LRTなど周辺の関連整備等も含めれば1000億円を超えると思われます。

特筆すべきは「熊本城ホール」の整備です。全く新規の芸術文化施設となるこの施設は、3000人規模の催しを単独で開催でき、席数は約2300席の規模で建設計画が進められています。ここには、新幹線で40分程度の博多でMICE機能が不足している現状をにらんで、本気で熊本にMICEや文化芸術イベントを誘致しようという市の強い意気込みが感じられます。本施設の整備に、熊本市は先の再開発施設の床等を298億円で購入しています。


また先述の通り、熊本市内ではこれ以外にも同規模の開発プロジェクトが複数進行中です。

 

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熊本市の人口は約74万人、一般会計は4000億円弱。熊本市政令市移行は堺市より後ですし、新幹線の駅も以前からあったわけではありません。県庁所在地であるという違いはありますが、堺市とほぼ同規模の自治体でこれだけの事業ができていることに、私は大きな衝撃を受けました。


もちろん行政の施策を事業規模で一面的に評価するつもりはありません。今回は調査できていませんが、中長期的な財政への影響も考慮しなければなりませんし、いまだ市の周辺部が復興の途上にある中で、ここまで中心市街地に集中的に財源を投下することへの批判的な意見も当然あることでしょう。また、堺市熊本市のやっているような大規模開発をやれと主張しているわけでもありません。


しかしながら私が、堺市が大きく劣っていると感じたのは、政令市という大きな自治体が将来に渡ってどのような都市を目指しどのようなアイデンティティを歴史の現在に刻むのかという長期に渡る戦略的な発想や計画、ビジョンです。


このことは市政に対する安易な批判ではありませんし、私は行政だけに責任を転嫁しようという気もありません。二元代表制のもとで大きな政策を示して来れなかった堺市議会にも同等の責任はあると思いますし、またうつろいやすい堺市民(有権者)の民意にもその要因はあると思います(「民意」が持つ「意義」を否定しているわけではありません)。


とは言え、それらは現時点においては所与の条件ですので、それらを踏まえた上で、私も議会議員として堺市に何ができるかを考えなくてはなりません。
今回の視察は以前から予定されていたものでしたが、堺市長選挙と衆議院選挙という大きな政治の節目の後に実施できたことを奇貨として、今後の研鑽につなげて参りたいと思います。