保守派のための「反カジノ」論(番外編)大阪カジノ・IRに関するだいぶニッチなネタ
元堺市議会議員の野村ともあきです。
「保守派のための「反カジノ」論」の続きとして書くと告知しておりました「地勢リスク」については明日以降に書けたら書くようにします。
ここ数日、大阪カジノ計画について調べておりましたが、はっきり申し上げてとんでもない計画内容で、調べれば調べるほど首をかしげたくなるような項目が出てきて、憤りを感じるとともに、めまいがしております。
インターネットの別の媒体にもまとまった「カジノ批判」を書いたのですが、完成原稿は多分6000字くらいの長さですが、推敲する前は12000字くらいありました。それでも書きたいこと(書かなければならないこと)の半分くらいしか書けてない感じがします。
そこで少し予定を変更して、本稿では大阪カジノに関して一般的な原稿記事に書くにはちょっとニッチでマニアックだけど、お蔵入りさせるのはもったいない話を書いておくことにします。
下書きなし、推敲なしですので、雑文乱文はご容赦を。
また予備知識がないとわからないことも多々あるかもしれませんが、そこはご自身でググってください。文末に参考書籍も記載しました。
■ジャンケット規制が進むマカオ、中国人ハイローラーは大阪に来るのか
別稿で、大阪カジノの規模(台数)から逆算しても入場者や売上の目標は達成できないと書いた。でも、カジノに詳しい方からは「カジノを売上の多くは桁外れの金を賭けるハイローラーと呼ばれる客(大王製紙の井川さんみたいな人)が生み出しているから、一般フロアは客で埋まる必要はない」という指摘があるかなと思った。
話が専門的になり過ぎるのでそこには書かなかったが、私はハイローラー客も大阪には呼べないんじゃないかと考えている。
マカオやシンガポールなどのカジノの収益構造は確かに上記の通りだし、恐らく大阪IRの基本構想が作られた2019年あたりは、誘致コンサル業者もカジノ事業者もそのつもりで事業を計画していたと思う。
(当初の)大阪カジノ・IRは、旺盛な中国人訪日観光客を当て込んだものだったので、中国人超富裕層をハイローラーとして呼んでくることが大阪カジノの成否を握っていたのは確かである。
カジノへの誘客業務をジャンケットと言う。ジャンケット業者(ジャンケッター)は誘客以外にも色々な付帯業務を代行し、カジノ経営の重要な役割を担う。
マカオにもサンシティやスタンリーグループ、タクチュンなどの有力なジャンケッターが存在する(した)。
ところが昨年2021年11月に、最大手のサンシティグループのトップが逮捕されるという衝撃的なニュースが報じられた。一説には「香港の次」を模索する、習近平・中国中央政府の思惑があったとも言われている。
一方、マカオのカジノライセンスの更新が今年(2022年)の6月に控えており、そこでカジノとジャンケットに関する大幅な規制強化が行われることがすでに発表されている。
このサンシティグループの消滅と規制強化は、マカオのカジノ業界の勢力図にも大きな影響を与えそうで、その余波は日本のカジノ・IRにも及びそうである。
実は日本のジャンケット業務は非常に規制がきつく、恐らくジャンケッターにとってもカジノ客にとっても魅力的でも利便性が高いものでもない。
中国だろうが中東だろうが、世界中どこにでも行ける「超」のつく富裕層であれば、わざわざ大阪を選ぶことはしないのではないだろうか。
■大阪・夢洲にカジノとしての優位性はあるか
優位性ははっきり言って「ない」。
- まず非常に大きな「言葉の壁」がある。シンガポールもマカオも英語、中国語が公用語並に通じるが、一般的な日本人にはどちらも通じない。
ディーラーは高い技術を要求されるが、その上、英語や中国語まで話せる人材となると日本で育成するのは相当ハードルが高いだろう。というかそこまでスキルがあったら他の仕事に就くよね。 - さらにシンガポールもマカオも、すでにIRが整備されて長い年月を経ており、町の機能がほぼ成熟化している。財政が豊かなので公共サービスも行き届いている。インフラは高度に発達し、食事、買い物、カジノ以外の娯楽も豊富である。
対して夢洲は、現在上下水道すら十分に敷かれておらず、店はコンビニが一軒あるだけ。町がないから道路もなく、鉄道もまだ敷かれていない。もっと言えば地面すらまだない。
万博が終わってからカジノが開業するまでに先行進出する商業施設も恐らくないだろう。 - シンガポールもマカオもカジノの立地が非常に良い。マカオには約40軒のカジノが密集しており、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズはアジア有数の観光地のど真ん中にある。シンガポールのチャンギ空港は世界トップクラスのハブ空港である。
対して夢洲へのアクセスは非常に悪く、国土軸からも観光動線からも大きく離れている。 - 気象条件が厳しい。シンガポールは赤道直下、マカオは緯度11度くらいで沖縄よりはるかに南方にあり、ともに温暖な気候である。有名なマリーナ・ベイ・サンズのプールは一年中泳げる。
対して夢洲は、日陰がないため夏は異常に暑く、海辺のため吹きさらしで冬は寒い。雨期があり、台風が多くて、地震の発生確率も高い。ちなみに隣の咲洲は、770キロ離れた場所で起きた東北大震災でも被災した。 - シンガポールは国際的な金融拠点としての地位を確固たるものにしていて、カジノ以外の目的でも世界中から訪れる外国人がいる。近年はやや社会情勢が不安定だがマカオと香港も同様である。
大阪には国際的な専門機能があるわけではなく、観光以外にビジネス目的で外国人が訪れるケースは稀である。
■スロット6400台は日本人の嗜好? パチスロメーカーへの忖度?
大阪のカジノには6400台という桁違いのスロットマシンが設置される計画となっている。なぜこんなに機械式のゲーム機が多いのか明らかにされていないが、次のような理由が考えられる。(すべてがスロットマシンかは未定、実際はテレビポーカーみたいなものも含まれると思われる)
- 「優位性」の項でも書いたが、ディーラーは高いスキルが必要な職業であり、人件費も高い。大阪カジノの異常に高い収益を達成するためには、対人のテーブルゲームより機械式を増やす必要があった説。
- パチスロという娯楽がすでに定着している日本人の嗜好にあわせた。
別稿でカジノの主要顧客は訪日外国人から日本人へと変わったと書いたが、中国人に人気のゲームは対人のバカラ、日本人が好きなのが機械式のギャンブルである。まさかパチンコを置くわけにもいかないので、パチスロに近いスロットマシンを多く設置することになったのではないだろうか。
ちなみにマカオなどの平均的なカジノのスロットマシンの設置台数は1000台ほどなので、いかに大阪カジノのスロットマシンが多いかがわかる。
比較の対象になるかわからないが、国内の郊外の大型パチンコ店の設置台数が1000~1500台くらいである。南大阪の人にしかわからないと思うが、私の地元近くにある松原市丹南の昔のパチンコ村(現・パチンコ123)は多分3000台くらいあるので、あれの倍くらいかと勝手に想像している。 - カジノのスロットマシンとパチスロは全然違うものだと思うが、それでも日本語化や日本人に合わせたデザイン、コンテンツなどのローカライズは必要なので、日本のパチスロメーカーも今後大きく関わってくると思われる。
本邦で強い開発力と営業力を持つパチスロメーカーを念頭に置いた施設構成である可能性は高い。
■パチンコ業界から学ぶ「カジノ利権」
ネガティブな話なのであまり表立って言われないが、カジノとマネーロンダリングは切っても切り離せない関係である。カジノでなぜ巨額の金が動くのかと言うと、マネーロンダリングがあるからである。
違法なビジネスで儲けた金をカジノでチップに交換しそれをもう一度現金化すれば違法な資金が洗浄されてしまう。
地下マネーを容易にロンダリングできる環境があるということは、それだけ地下ビジネスが活発化するということである。
日本のカジノがマネーロンダリング対策をどのようにするのかはあまり聞かれないが、この辺りの対策は国際的にも非常に重要である。
ところで近年はだいぶ浄化されたが、30年くらい前のパチンコは不正や脱税、アングラの温床だった。
パチンコを認可、検査する機関には、所管する警察庁や警視庁から警察官僚が天下り、政界では族議員が暗躍した。
店が電子部品を取り付けて台を操作するのは当たり前、脱税もやりたい放題、地下化した資金は北朝鮮に流れていた。ピークの1990年頃には年間600億円もの資金が北朝鮮に渡ったとある。それらはノドンやテポドンの開発費用となった。
恐らくこれと同様のことはカジノでも起こり得る。
大阪カジノで動く金は年間7兆円と推測されている。7兆円もの金が動けばそれに群がろうとする輩も大量に発生する。表の業者以外にも、反社半グレビジネスもはびこるだろう。国際的な犯罪の温床となることも考えられる。
整備計画では、すでに340名の警察官の増員が必要とされている。かかる経費は33億円であるが、これで十分かどうかはわからない。
以上、大阪カジノ・IRに関するニッチなネタを書きました。
蛇足ながら、誤解なきよう最後にお伝えしておきますが、私は別にギャンブル好きでもパチンコ好きでもありません。これらのネタは今回のカジノについて調べる中で知り得た知識です。悪しからず。
膨大なインターネットの情報も元にしておりますが、参考書籍も挙げておきます。