野村ともあき【非公式】ブログ|前堺市議会議員

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大阪カジノ・IR進出を巡るマカオのカジノ事業者の駆け引きについて

堺市議会議員の野村ともあきです。

先日アップした「保守派のための「反カジノ」論 番外編」にはたくさんのアクセスをいただいております。ご覧いただきありがとうございます。

記事の中でパチンコ業界については色々参考文献を挙げたのですが、カジノの「ジャンケット」に関する文献はないの?というお問い合わせをいただきました。
がっつり探したわけではないですが、現在進行形の事象なので、紙の文献はあまりないようです。私も当該記事を書くのにネットのニュースを中心に情報収集をしました。

というわけで、補足で「ジャンケット」についてもう少し詳しく書いておきたいと思います。

 

ジャンケットはカジノにおいて主に「誘客仲介・送客業務」「賭け金の貸付・回収」「場外カジノの運営」といった重要な役割を担います。

「誘客仲介・送客業務」というのはカジノの上客を囲い込んで、様々なプレミアムを付与しながらカジノに招くための業務です。食事や宿泊がタダになったり、現地までの航空チケットが贈られてきたりと、至れり尽くせりのサービスでVIP客の足をカジノに運ばせます。

「賭け金の貸付・回収」というのはそのままの意味で、負けが込んでいたり、もっと賭けたいと思っている客に資金を貸し付けます。ジャンケッターはもちろん客の資産状況や信用情報を保持しています。

「場外カジノの運営」とは、実際のカジノ以外の場所でカジノを開帳し、遊ばせるサービスです。一晩に何百万、何千万、何億円と金を使う超VIP客に特別な部屋や別の施設を用意するものです。

 

ところが、日本ではこのうち貸付行為と場外カジノは禁止される方向で議論が進んでいます。今後の動向には注目が必要ですが、「誘客・送客」のみではジャンケットビジネスはまず成り立たないと思われます。

 

【資料】首相官邸IR整備推進会議 第7回 資料「いわゆるジャンケットについて」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ir_promotion/ir_kaigi/dai7/siryou3.pdf

 

マカオのカジノ事業者はだいたいジャンケット業者と組んでカジノを運営しています。
大阪に進出するMGMは、マカオではスタンレー・グループのSJMと組んでカジノを運営しています。

スタンレー・グループというのはマカオのカジノ王だった故スタンレー・ホーの一族が経営する各企業です。

 

一方、当初大阪に進出予定だったカジノ事業者のサンズはジャンケッターのサンシティグループ(太陽集団)と組んでいました。

サンシティというのはスタンレー・ホーに続いてマカオで急速に勢力を伸ばした、アルヴィン・チャウが率いたジャンケッターでした。

アルヴィン・チャウは、マカオの最下層からマフィアの一員となり、カジノの見張り番という駆け出しから、40代でマカオのカジノ王にまで上り詰めたという、まるでピカレスク映画の主人公のような「アウトロー立志伝」中の人物でです。

 

マカオの最下層からマフィアを経て賭博界の大物にのし上がったアルビン・チャウ氏
https://adkd.net/culture/2021/11/macau-gaming-king-arrested/

 

サンズはかなり早い段階から日本進出を進めていましたが、サンシティが独自で北海道や和歌山、大阪への進出を模索し始めたためか、2019年夏にサンズは大阪からの撤退を表明します。この時期は新型コロナ発生前ですので間違いなく経営上の判断です。(サンズはさらにその後のコロナ禍で、2020年5月にじゃ日本からも撤退を表明しました)

 

ところがその後、2021年11月27日に違法賭博と資金洗浄の容疑でアルヴィン・チャウが逮捕されます。この衝撃的なニュースによって、マカオはもちろん全世界のカジノ業界に激震が走りました。
サンシティの株価は暴落。マカオのカジノの約半分を仕切っていたサンシティの崩壊で、マカオのカジノ業界は大混乱に陥ることとなりました。

 

一方、今年2022年の6月にはマカオのカジノ・ライセンスの更新が迫っています。
すでに公表されているその内容は、ジャンケット業務を大幅に規制するものとなっており、マカオのカジノ事業者に大きな影響を与えることは必至です。

 

マカオカジノ法改正案の内容が明らかに…ライセンス最多6枚、契約期間は最長10年など
https://news.yahoo.co.jp/articles/9ff01b39273e59a0d5118cc161e8deff19675600

 

習近平は中国国内のビデオゲームサブカルチャーに対しても厳しい規制を進めていますが、カジノもその対象になったということが伺えます。

すでに世界のカジノ業界は、新型コロナの影響で壊滅的なダメージを受けていましたが、この規制強化でマカオのカジノ事業の先行きは極めて不透明なものとなりました。

 

そして、マカオのカジノを取り巻く環境の激変は、間違いなく各カジノ業者の日本進出にも影響します。

もともと財務基盤が強くないMGM、サンシティの崩壊でシェア拡大を狙うスタンレー・グループ、サンシティを失ったサンズの動向など、それぞれの思惑が複雑に絡み合い予断を許さない状況が続いています。

 

MGM・オリックスコンソーシアムが大阪進出に際しより有利な条件を引き出そうと躍起になっているのも、このような背景があると推測されます。

 

今後、大阪へのカジノ誘致を決める議会議決が成立したとしても、カジノ開業までは紆余曲折があることでしょう。