野村ともあき【非公式】ブログ|前堺市議会議員

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日本のカジノがアニメだらけになりそうな理由(わけ)

堺市議会議員の野村ともあきです。

前回のエントリまで、「大阪カジノ・IR計画」にはらむ問題点や課題ついてかなりの量の文章を書いてきましたが、本稿では少し切り口を変えて、現在までに明らかにされている事実を元に、大阪のカジノがどのような施設になるか(ゆるめに)予想しようと思います。
とは言え、あくまで7年も先のことですので、ネタ的なエントリであることをご承知おきください(拝)

今回も下書きなし推敲なしのファーストテイク投稿ですので、雑文乱文はご容赦願えればと存じます。

 

■「民間賭博」の先例であるパチンコ業界から学ぼう

私は未知の事象、新しいことについて考える時、「先例」に当たることをモットーにしています。
「歴史に学ぶ」というと大げさですが、人類の長い歴史上にはどんなことにも似たような先例があって、そして人間はだいたい同じような行動をとるものだからです。

というわけで、このたび大阪カジノについて考える際に、私は同じ民間賭博であるパチンコについて調べました。膨大なネットの情報に加え、10冊ほどパチンコ関連の書籍を読みました。

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ずっと以前に『パチンコ「30兆円の闇」 溝口敦著』という本を読んだことがあったのですが、調べたら2005年の発刊でもう20年くらい前の本でした。読み返そうと思いましたが古い本なので自宅のどこにあるかがわからず図書館で借りて読みました。

「30兆円」とは言うものの、パチンコの市場規模は年々下がっていて今は15兆~20兆円を割るくらいです。それでも非常に大きな市場であり、歴史も長いので、そこには数々の利権も存在します。

 

パチンコは合法ギャンブルではないので色々法的にあいまいな部分があるのですが、遊技機としては内部プログラムの仕組みや抽選確率、出玉量、台の仕様に至るまでかなり細かい規制があります。

この規制は警察庁が強い影響力を持つ一般財団法人「保安通信協会(保通協)」というところが検査をしていて、上記のような規制は保通協の「内規」で定められています。

この内規にどのくらい法的な介入が可能なのかはよく知りませんが、パチンコ・パチスロが「どれくらいの確率で当たって、どのくらい玉が出て、どの程度客が勝ち負けするか」はほぼ保通協のさじ加減ひとつで決まるようになっています。

内規は頻繁に更新されるので、そのたびにパチンコ・パチスロの仕様は大きく変わります。前述書が書かれた2000年前後は、一日10万20万の勝ち負けは当たり前の異常な状態でしたが、今は規制が強化され、逆に客離れが起き市場規模が縮小する原因となっています。

射幸心をあおれば客が増え、抑制すれば客は減る。単純な構図ですが、人間というのは因果な生き物ですね。

 

保通協は完全な警察庁、警視庁の天下り団体で、役員のほとんどが警察OBです。莫大な検査料利権があり、これが日本からパチンコがなくならない大きな壁となっています。(参考書籍:「なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか 若宮健著」)

 

法的な規制の網が直接かかっていないパチンコの射幸性は、保通協=警察官僚の胸三寸に一任されているわけで、極めて属人的に管理されています。

ただ、保通協の職員はまだ「まじめな日本の(元)警察官」ですので、(ギリギリのところですが)これまで最低限の倫理観や抑制力は働いてきたと思います。

 

■日本版カジノはどのような内容になるか

さて一方、日本のカジノを管理するのは法で定められた「カジノ管理委員会」です。

カジノのマシーンの“内規”を(パチンコのように)管理するのはどこなのかはわかりませんが、恐らくカジノ管理委員会内部の組織になると思います。

 

ところで、大阪のカジノの整備計画では機械式ゲーム(スロットマシンとかテレビゲームのようなものと思われる)が6400台置かれることになっています。誤字ではありません、「6,400台」です。

一般的な海外のカジノでもスロットマシンの台数は1000台前後だということですから、これは異常な多さです。

日本国内の都市郊外にあるような超巨大パチンコ店舗の設置台数は1500~2000台くらいが多く、日本最大の店舗でも3000台くらいだそうです。大阪のカジノはその2倍から3倍くらいのイメージでしょうか。

 

大阪カジノが海外の高級エンターテイメントや紳士の社交場的なイメージよりも「超巨大なパチスロ店」に過ぎないと言われているのは、このあたりが理由です。

 

大阪のカジノ事業者も「主な客は日本人」と認めています。コロナ禍もあってインバウンドが期待できない中、大阪カジノは当初の訪日外国人旅行客をターゲットにした計画から大幅に変更が加えられました。

現在の大阪カジノは「外貨を稼ぐモデル」ではなく、「外国のカジノ業者が日本人から金を稼ぐ計画」に変わっているのです。

 

先に述べたように、(元)警察官僚が管理するパチンコや、政府が所管している公営ギャンブル(競馬とか)と違って、カジノは完全な「民間賭博」です。

カジノ事業者は「一切の躊躇なく」、日本人の金を「むしり取れるだけむしり取る」方法を、「全力で」実行してくるでしょう。当たり前のことです。

カジノ業者が社会に貢献してくれるとか、納付金を納めてくれるとかは、むしり取られたあとの話で、メリットとして掲げるのはそもそも議論の順序が違います。

 

さて、大阪カジノが日本人を主要顧客に想定しているとなると、その内容は日本人の嗜好に合わせた日本人好みの仕様に仕上げられると思われます。

 

■日本の「パチスロ」の特異性

話は変わりますが、日本人による「魔改造」という俗語があります。
日本人は海外から入ってきたものや文化に日本独自のアレンジを加えることに長けています。
魔改造は食文化などで顕著に見られ、カツカレー、日式ラーメン、ナポリタンスパゲッティ、焼餃子、テリヤキライスバーガーなどが代表的な例と言えるでしょう。

個人的な意見ですが、この例はスロットマシーンにも当てはまると考えています。

 

現在の日本のパチスロは当たり絵柄が描かれたドラムリールよりもキャラクターなどで演出される液晶画面の方が大きいのが当たり前となっています。海外のスロットマシンにはまずないデザインや仕様です。

単純に「当たりか外れか」がシンプルに表示されるのではなく、大当たりに至るまでにアニメやビデオゲームのキャラクターが物語の一シーンのように登場し、目がくらみ耳をつんざく光と音の演出が人間の脳に直接刺激を与え続けます。完全に「洗脳」の領域です。メーカーはこの演出を脳科学に基づいて最も刺激が強くなるように設計していると認めています。

 

冒頭に挙げた書籍の中で大変おもしろかったのがパチンコがアニメだらけになった理由(わけ) 安藤健二著」という本でした。

 

本書の内容を簡潔に紹介すると次のようになります。

保通協の縛りによって台の差別化が難しくなったパチンコ・パチスロメーカーは、アニメや著名人をモチーフに起用することによって売り上げを伸ばす道を模索しました。折からの液晶画面の普及や台の高性能化もその流れを後押しすることになります。結果、美空ひばりからエヴァンゲリオン、果てはちびまる子ちゃんの作者までパチンコ化されてしまうというとんでもない状況が生まれました。

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パチンコ「さくらももこ劇場コジコジ2」 画像出典:ニューギン公式サイト

 

一方で、市場が低迷し業界全体がジリ貧に陥っていたアニメ業界には、版権をパチンコに卸すことで糊口を凌ぐという構図ができあがってしまいます。

表立ってはあまり語られないということですが、社会現象化した某セカイ系現代SFロボットアニメもパチンコのタイアップ料収入によって劇場版を制作できたと本書には記されています。

また某世紀末拳法マンガの原作者はパチスロ機のヒットで数百億円のタイアップ料を手にしたと言われています。

(一部の)アニメ関連企業が本業のアニメ制作ではなくパチンコマネーに依存して存続できているというのは公然の業界タブーとなっているようです。

 

ともあれ、それぞれの業界の利害が一致することで、このビジネスモデルは急速に拡大することとなりました。

 

その後、アニメ等を題材にしたパチスロ(パチンコ)機の演出はどんどんと進化し、結果、世界に類を見ない日本独自のスロットマシンが生まれることとなりました。

 

大当たりを事前に告知する「前兆システム」や、それを盛り上げる強烈な音と光の演出、脳科学に基づいて中毒性(依存性)を最も高めるように設計された確率設定、中でも機械を相手にした「無機質な遊び」をキャラクターによって「コンテンツ化」したことは、コンテンツ大国・日本がギャンブル機器に起こしたゲーミング・イノベーションと言えます(ほめてません)。

 

■日本版カジノはパチスロ化するのか

話をカジノのスロットマシンに戻すと、これら日本のパチンコ・パチスロで培われたノウハウは、恐らく日本版「機械式ゲーミングマシン」にも存分に生かされることになるでしょう。

 

いやカジノのスロットマシンは日本のパチスロと全く異なり、バックグラウンドやネットワークの処理の違いから、日本のパチスロ技術がカジノのマシンに入り込む余地はないという意見もあります。海外メーカーも日本メーカーの参入を排除する方向に動くでしょうから、確かに参入の壁はあるでしょう。

しかし、実際にセガサミーなどの国内パチスロメーカーやゲーム開発会社はカジノへの参入を模索しています。(セガサミーのカジノ運営事業への参入は横浜市のIR撤退により頓挫しましたが)

 

あくまで私見に基づく私の想像でしかありませんが、日本の官僚の「先例主義」、政界における「パチンコ業界」からのロビイング、海外マシンのローカライズの壁、これまで日本のメーカーに蓄積されてきたノウハウや版権などの知的資産、1施設6400台のためだけに全くゼロから製品を開発する非効率性、などから考えると、日本のカジノの機械式ゲーミングが「アニメだらけ*」になることは十分考えられると思います。(*アニメにはゲームなど日本のサブカルチャー全般を含む)

 

要するに「ガワのデザインや演出などはパチスロを流用しつつ、払い出し枚数や方法が違う」とか、そんな感じになるのではないかということです。

 

前述したパチンコの仕様を管理する保通協の内規では、賭け方、絵柄配列、内部抽選確率、抽選の方法、出玉、ゲーム数の規制などが非常に細かく決められています。
一方カジノではそれがどのように規制されるかは現時点ではわかりません。

 

カジノ管理委員会の規制内容によっては、例えば8枚がけ10枚がけOK、プレイ間ウェイト無し、小役一回100枚、大当たり一撃10,000枚、JACKPOT(他人の当たりまで貯留)あり、24時間営業、もちろんチップは1枚500円~100万円とかもアリな仕様になる可能性がある……かどうかはわかりませんが、そうなったら恐ろしいことですね、という話です。

 

海外のスロットにはジャックポットで数十億円という配当が存在します。

この射幸性にオンする形で、ゲームの流れ自体をコンテンツ化してユーザーを飽きさせないように引き込み、光と音とガチャシステム(いわゆる先読み、前兆)を規制しないで垂れ流せば、この世で最も凶悪な「悪魔のルートボックス」が誕生するのではないかと感じています。

冗談や笑い話ではありません。

日本国内のカジノはヘタをすると大阪一か所とかになり、寡占化は間違いありません。

そうなると恐らく業界の自主規制も働きません。

唯一抑止力を発揮できそうな行政は、大阪ではすでに機能不全に陥っています。

 

文字通り「最後の砦」として、政府ならびに国会議員の皆様方におかれましては、カジノ管理委員会での議論をしっかり行っていただくとともに、ゲームの仕様を厳しく管理することはもちろん、産業政策、経済安全保障、財政、社会倫理などから多面的に法的な網をかぶせていただけることを切に願うばかりです。

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悪魔を追い払うためにインク壺を投げるマルティン・ルター 出典:いらすとや

■追記

本投稿にご関心をお持ちいただいた方は、是非とも私の他のエントリーもあわせてご覧いただければと思います。

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