野村ともあき【非公式】ブログ|前堺市議会議員

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無題

大阪ダブル選挙が絶望ととともに終わった。現職吉村知事は史上最高得票となる243万票を獲得し、次点候補に6倍近い異次元ともいうべき大差をつけ圧勝した。当初互角の勝負ができると一部で楽観視されていた大阪市長選挙もトリプルスコアに近い差がついた。惨敗という表現すら生ぬるい結果である。

本選挙に関する総括は何をどう書いても批判や愚痴にしかならないので、関係者の気分も悪いだろうし、私も気分が悪いので、書くのを止めておこうかとも思ったが、批判に耳を傾けず反省もない組織に改善や成長はないし、長い目で見て自分のためにもなるだろうと思って書き留めておくようにする。終わってからごちゃごちゃ言うなという批判も甘受する。耳の痛い批判を聞く気がない向きに書いているわけではないので、読みたくない人は読まないでいただければ幸いである。本来であればチラシの裏にでも書いてせんべいの空き缶にでもしまっておくような内容だが「非公式ブログ」に書いてひっそりと拡散はせずに置いておく。なにぶん感情に任せて書いているので推敲も構成も一切していない。なぐり書きである。文責は負うが「非公式」ブログということでご理解いただきたいと思う。

 

以前にも書いたが本選挙の意義はまさに大阪の次の100年をうらなう選挙だった。最も大きな争点はカジノだ。地域経済を吸い上げ、行政がカジノに依存する、大阪をそういう町にするかどうかを決める選挙だった。カジノの契約期間は65年かそれ以上。そのような長い時間、大阪がカジノに影響を受け続ければ、恐らく街を覆う空気や人々の気質のようなものも変容する。歴史上、「なにわ」の街のイメージはいくつもあったと思う。古代、中世、江戸、明治、大大阪、戦後、高度成長、バブル後、吉本、維新……それらに続く新しい「大阪」の「有り様」や「絵姿」をどう描くかという大阪人の選択だった。

カジノの事業内容に対する批判はもうこれ以上必要ないほど世の中にはあふれている。私もずっと批判し続けてきた。その中で私が最も懸念するのが「カジノのある町が生み出す大阪の空気」である。それをイメージするのに最も適しているのは、東南アジアの場末のカジノだ。私は大阪のカジノはシンガポールマカオのようにはならないと思う。理由は大阪の僻地である人工島に一軒ポツリと作られるだけの施設だからだ。アジアで成功していると言われるシンガポールのサンズはマーライオンの隣、大阪でいえば難波のスイスホテルか梅田のヒルトンくらいの場所にある。マカオには約40軒のカジノがある。好きか嫌いかは別にして、町全体が派手できらびやかで刹那的な享楽感に覆われている。
一方で韓国のカンウォンランドには私は行ったことはないが、若宮健さんとのトークライブなどでずいぶん詳しくお話を聞かせていただいたし、自分で調べもした感覚では、衰退する炭鉱の街にある一軒だけの場末の鉄火場という印象だ。カンウォンランドの売上は年間300億円程度に過ぎない。通りには質屋と性風俗店が立ち並び、生業をなくした人々は街を出ていくか、街を出る力すらない人々はカジノのアガリで支給される配給(まさしく「カジノの儲けを回された福祉」である)で細々と生活をしている。大阪のカジノ事業計画によると、売上はカンウォンランドの16倍である。果たして大阪のカジノは成功するのか。

大阪のカジノは港湾地区に作られる。人口が減り続けている此花、港、大正、住之江のエリアである。大阪のベイエリアに夜に訪れたことがある人はATCWTC、ハイアット、インテックス周辺の雰囲気と言えば想像できるだろう。あの言葉では表現できない寂寥感である。カジノで大負けしてあの場所に放り出された人の心情はどのようなものであろうか。カジノや夢洲駅の周辺は、コンテナがうず高く積み上げられ砂ぼこりと轟音を立てて大型トレーラーが行き交う場所である。カジノが一軒ポツリとできるだけであの広大な港湾地区のイメージが一変するとは私には到底思えない。

 

ここまで「前置き」のつもりがものすごく長くなってしまった。このカジノと大阪府市は65年間の契約を結ぶ、それも極めて異常な不平等な条件のもとに。まさに今後大阪の100年にわたって影響を与える大きな決断がこの選挙であった。問題が多いからこそ、国は「住民合意」を図るために、カジノの認可に対して異例の延長措置を取った。統一地方選挙の結果を見極めようとしたのである。この選挙がどれほど大きな意義を持っていたか理解できよう。この延長措置を実現するために、いくつもの団体が国に必死の働きかけを行った。一年以上をかけた運動の末、当初の目標通り「統一戦後の判断」という奇跡と言える決定をつかみ取ったのである。その運動のメンバーの多くは非維新の候補者の選対関係者として選挙に関わっていた。最後の最後の大勝負に出なければならない局面だった。
しかし、全く理解できないことに、非維新の中心的存在となるはずだった候補者の選対はカジノを争点にすることを避けた。候補者に「反カジノ」を訴えさせることを止めた。本当に全く理解ができない。私はかなり早い段階から戦略的提言を行い、カジノに強く反対し、そして対案として物流機能の強化を打ち出すことを強く勧めた。カジノの賛否を問う事前の世論調査はほぼ全てが「反対」多数だった。「博打の是非」は小学生でも答えられる。自治体制度の是非を問う「都構想」とは天と地ほどのわかりやすさの違いがある。これほどわかりやすい争点はなかった。維新との戦いという点で言えばまさに10年に一度の機会だった。しかし私の意見が聞き入れられることはなかった。

知事選に関しては候補者が乱立した。しかしこの点についても私は早い段階から、東京都知事選挙などの例から新興政党による候補者乱立の可能性があるので対策するよう提案をしていた。一部の人間には共有していたので時が経てば日の目を見ることもあるだろう。ちなみに私は完全無所属の立場から複数の知事選候補者の陣営に関わりを持ったが、それはこの戦略に基づく行動である。市長選の候補者は幸いなことに一本化され一騎打ちの構図を作り出すことができた。しかも私が最適任だと考えていた北野妙子氏である。政策議論に耐えうる実力を備えた女性の候補者である。真っ向からカジノや都構想に関して政策論争を挑めば100%議論に勝てたと思える千載一遇の候補者だった。しかしなぜか(最も重要な選挙の開始時に)候補者自身の口からカジノ反対や、カジノの争点化や、夢洲開発の対案や、教育無償化の制度上の瑕疵や、三度目の大阪市廃止住民投票や、広域一元化の否定や、松井市長の勤務姿勢に対する批判は封印された。選挙も最終盤になってカジノ反対や、SNSでちょろっと「木を切る改革」への批判などが言われだけだった。全く意味はなかった。市長は大阪市民270万人の代表である。強いリーダーシップや人を引き付けるビジョンが必要だ。だが、最も重要な争点であるカジノについて自分では判断せず「住民投票」に委ねると言い続けた。これでは有権者の心を打つはずがない。批判ばかりではなく「政策を語れ」。これも私が何度も求めたことである。メディアが報道しない、討論会が行われないことにも批判する声があったが、選挙を盛り下げたのは候補者の責任である。社会的な関心が高まっていればほっといてもメディアは食いつく。私は報道されないのは候補者の責任だと思う。その点において維新のメディア戦術に大きく後れを取っていたのは間違いない。着物を来て運動すればメディアが取り上げてくれると思っていたのなら猛省するべきである。浴衣で道頓堀川から手振りをするような10年前のセンスでは、今の大阪では絶対に選挙に勝てない。

 

当然の帰結として選挙の中間世論調査は絶望的な数字が出た。この時点で私は吉村300万票を覚悟した。自民党は崩壊すると確信した。崩壊には二つの意味がある。一つは知事選挙に引っ張られて多くの一人区の府議会議員候補が落選すること。これは4年前にも維新候補者の異次元の得票を見てきた経験から感じたことである。二つ目の意味は、浮足立ち混乱したラガード候補がカジノ反対に対してとんでもない行動に出ることである。なんのことか詳細はいちいち書かないが予感は的中し大炎上した。無関係な有能な候補者まで流れ弾に当たって落選の憂き目にあった。政治は結果責任だというのなら考案した人間は慣用表現ではなく万死に値すると思う。

ここから各候補者と陣営は勝利をあきらめたと思う。議員選挙が同時に行われていたことから、知事候補は議員選挙のための組織内応援候補としての役割に舵を切った。事実、たつみコータロー候補は最終盤で何人もの共産党地方議員候補を救ったと思う。ある意味、当初の擁立の目論見に立ち返ったとも言えるが、無所属を掲げ住民のための知事候補としては賛同しかねる行動である。仕方がないのかも知れないが一貫性を欠く戦略展開だった。

一方で維新陣営は「もうこれで絶対負けない」という確信を持ち、アリバイ作りのためにIRは争点と言い出した。最悪の展開だが、そら私でもそうするわ。各陣営が思いつく限りの最悪の戦い方を展開したことで、統一地方選挙は惨憺たる結果で終わった。

かくして、国はカジノを認可する最終調整に入ったとの速報が入ってきた。予想通り過ぎる展開である。

 

さて冒頭、絶望的と書いた。私が最も恐怖を感じているのは、大阪市会の単独過半数である。本当に身震いがするほど恐ろしい。

少し専門的な話になるが、中間自治体である府の議会の過半数と、基礎自治体である市(しかも日本有数の巨大政令市)の議会の過半数では全く意味が違う。ピンとこない方は、政令で指定された基礎自治体が所管する事務を調べてみて欲しい。思いつくままざっと挙げれば、上下水道、義務教育、児童福祉、介護、健康、セーフティネット、道路行政、消防、地域防災、扱っていないものを挙げるほうが早いかもしれない。大阪府の専決処分率は46.8%である。これと同じような状況が、基礎自治体である大阪市で、維新の首長によって展開される蓋然性が極めて高い。恐怖を感じないほうがおかしい。

 

今、私にできることは何かを真剣に考えている。