野村ともあき【非公式】ブログ|前堺市議会議員

野村ともあきの非公式ブログです。前堺市議会議員 公式ブログは→https://note.com/nomuratomoaki/

堺市議会傍聴記 疑問を感じさせる堺市の議会対応

堺市議会議員の野村ともあきです。

昨日3月24日、堺市議会が閉会しました。今定例会は予算審議の議会であり、令和4年度一年間に「堺市が何をやるか」を決める大変重要な議論の場でした。

 

その中で議論が集中したのが「高齢者健康増進施策」関連の予算です。

今議会には「堺市おでかけ応援制度」を縮小する条例案が出されていました。

「おでかけ応援制度」とは堺市で65歳以上の方が公共交通を100円で利用できる制度です。移動支援のほか健康増進、経済振興などの効果があると認められていました。

維新首長の永藤市長は、この制度について選挙中「拡充する」と言っていたにも関わらず、昨年12月の議会で70歳未満を制度の対象から切り捨てる改悪案を提案してきました。

この公約破りに対し議会や市民は猛反発し署名運動にまで発展しました。その結果、議案が否決されたという経緯がありました。

 

ところがそれから3か月も経たない今定例会に、再び制度を少し変えただけの同様の議案が提出されてきたのです。常識ではあまり考えられない行為です。

当然、維新以外の議会の会派は怒りをあらわにし、議場では「議会軽視だ」と厳しい言葉が飛び交いました。

採決の結果、維新以外の会派の反対で、前定例会に続いて「おでかけ応援制度の改悪案」は否決されました。

 

一方で、予算審議が続けられる中、同じ高齢者健康増進施策であった大阪府が開発した健康アプリ「アスマイル」に堺市が追加費用を支出する予算が議論の俎上に上ります。

このアプリは現時点ですでに公開、運用され堺市民も大阪府民として利用できるものです。それになぜ新たに費用を追加支出しないといけないのかが議論となりました。

また同じ健康増進施策である「おでかけ応援」の予算は削減し「アスマイル」には予算を支出することは整合性に欠けるのではないかと問う声もありました。

しかし当局は、議論のかみ合わない論点のずれた答弁を繰り返すばかりで、明確な支出の根拠が示されたとは感じられませんでした。

 

議論の末、公明党から予算の修正案が提案されることとなります。この修正案は自民党、堺創志会などの賛成で過半数に達し一旦可決されました。

ところが驚くことに、これに対し市長は「再議権」を行使します。

「再議」とは議会の議決に対する市長の拒否権のことで、強い効力を持ちます。予算に対する再議の場合、再度議案を可決するためには議会の3分の2の賛成が必要となります。

堺市議会は維新会派が3分の1以上の議席を持っているため、修正案は廃案となってしまいました。

否決後は原案に戻って再度採決が行われることになりますが、予算を成立させないわけにもいかない各会派の思惑と、「議会解散」という事態もちらつく中、原案は可決されました。
公明党会派は予算に関する決議を提案する中で「苦渋の決断」という表現を用い、その心情を伝えました。

 

今回の議会で私が強く感じたのは、市長以下堺市行政当局のぞんざいな議会対応です。

反発を招くことが必至の議案を提案するのであれば、「なぜその議案が必要なのか」「どのような意義や効果があるのか」「認められないのであれば別の案や落とし所はないのか」を丁寧に話し合うべきだったと思います。
しかし私が聞く範囲ではそのような対応はなかったといいます。

また「再議権」もあまりに効力が強く影響が大きいので、行使する場合には細心の注意や配慮が必要です。議会に対して軽率に行使して良い権限ではありません。

 

堺市長に限らず、どうも維新の首長には、議会とは「戦うべき相手」、「対立し、闘争に勝つ政敵」とでも捉えている節が感じられます。

堺市選出の日本維新の会幹事長を務める馬場伸幸衆議院議員は、ちょうど今行われている西宮市長選挙の目的を「維新の党勢拡大のため」と述べました。

この言葉にも、維新が市民ではなく自分たちのために政治を行っていることが強く表れていると感じます。

 

首長と議会はともに民意を受けた市政運営の両輪で、議論を重ねることで、市民の多様な意見に応えて行かなくてはなりません。

 

議論の機会の少なさ、薄さは堺市の庁内組織にも存在する課題であると聞き及びます。

来年度予算を決める今議会は、本来であればアフターコロナの経済対策や教育の再生などもっと重要な取り組みがあったはずですが、予算を見渡す限り、堺市が何をやりたいのか全く見えてきません。

貴重な議会の審議時間の多くが、徒労に費やされたことを一市民として残念に感じた今議会でした。

 

さて新型コロナウイルスは収束したわけではありませんが、まん延等防止重点措置の適用も解除されました。子どもたちは春休みに入り、4月からは新年度がスタートします。

新しい年度が少しでも明るいものとなりますように願います。

日本のカジノがアニメだらけになりそうな理由(わけ)

堺市議会議員の野村ともあきです。

前回のエントリまで、「大阪カジノ・IR計画」にはらむ問題点や課題ついてかなりの量の文章を書いてきましたが、本稿では少し切り口を変えて、現在までに明らかにされている事実を元に、大阪のカジノがどのような施設になるか(ゆるめに)予想しようと思います。
とは言え、あくまで7年も先のことですので、ネタ的なエントリであることをご承知おきください(拝)

今回も下書きなし推敲なしのファーストテイク投稿ですので、雑文乱文はご容赦願えればと存じます。

 

■「民間賭博」の先例であるパチンコ業界から学ぼう

私は未知の事象、新しいことについて考える時、「先例」に当たることをモットーにしています。
「歴史に学ぶ」というと大げさですが、人類の長い歴史上にはどんなことにも似たような先例があって、そして人間はだいたい同じような行動をとるものだからです。

というわけで、このたび大阪カジノについて考える際に、私は同じ民間賭博であるパチンコについて調べました。膨大なネットの情報に加え、10冊ほどパチンコ関連の書籍を読みました。

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ずっと以前に『パチンコ「30兆円の闇」 溝口敦著』という本を読んだことがあったのですが、調べたら2005年の発刊でもう20年くらい前の本でした。読み返そうと思いましたが古い本なので自宅のどこにあるかがわからず図書館で借りて読みました。

「30兆円」とは言うものの、パチンコの市場規模は年々下がっていて今は15兆~20兆円を割るくらいです。それでも非常に大きな市場であり、歴史も長いので、そこには数々の利権も存在します。

 

パチンコは合法ギャンブルではないので色々法的にあいまいな部分があるのですが、遊技機としては内部プログラムの仕組みや抽選確率、出玉量、台の仕様に至るまでかなり細かい規制があります。

この規制は警察庁が強い影響力を持つ一般財団法人「保安通信協会(保通協)」というところが検査をしていて、上記のような規制は保通協の「内規」で定められています。

この内規にどのくらい法的な介入が可能なのかはよく知りませんが、パチンコ・パチスロが「どれくらいの確率で当たって、どのくらい玉が出て、どの程度客が勝ち負けするか」はほぼ保通協のさじ加減ひとつで決まるようになっています。

内規は頻繁に更新されるので、そのたびにパチンコ・パチスロの仕様は大きく変わります。前述書が書かれた2000年前後は、一日10万20万の勝ち負けは当たり前の異常な状態でしたが、今は規制が強化され、逆に客離れが起き市場規模が縮小する原因となっています。

射幸心をあおれば客が増え、抑制すれば客は減る。単純な構図ですが、人間というのは因果な生き物ですね。

 

保通協は完全な警察庁、警視庁の天下り団体で、役員のほとんどが警察OBです。莫大な検査料利権があり、これが日本からパチンコがなくならない大きな壁となっています。(参考書籍:「なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか 若宮健著」)

 

法的な規制の網が直接かかっていないパチンコの射幸性は、保通協=警察官僚の胸三寸に一任されているわけで、極めて属人的に管理されています。

ただ、保通協の職員はまだ「まじめな日本の(元)警察官」ですので、(ギリギリのところですが)これまで最低限の倫理観や抑制力は働いてきたと思います。

 

■日本版カジノはどのような内容になるか

さて一方、日本のカジノを管理するのは法で定められた「カジノ管理委員会」です。

カジノのマシーンの“内規”を(パチンコのように)管理するのはどこなのかはわかりませんが、恐らくカジノ管理委員会内部の組織になると思います。

 

ところで、大阪のカジノの整備計画では機械式ゲーム(スロットマシンとかテレビゲームのようなものと思われる)が6400台置かれることになっています。誤字ではありません、「6,400台」です。

一般的な海外のカジノでもスロットマシンの台数は1000台前後だということですから、これは異常な多さです。

日本国内の都市郊外にあるような超巨大パチンコ店舗の設置台数は1500~2000台くらいが多く、日本最大の店舗でも3000台くらいだそうです。大阪のカジノはその2倍から3倍くらいのイメージでしょうか。

 

大阪カジノが海外の高級エンターテイメントや紳士の社交場的なイメージよりも「超巨大なパチスロ店」に過ぎないと言われているのは、このあたりが理由です。

 

大阪のカジノ事業者も「主な客は日本人」と認めています。コロナ禍もあってインバウンドが期待できない中、大阪カジノは当初の訪日外国人旅行客をターゲットにした計画から大幅に変更が加えられました。

現在の大阪カジノは「外貨を稼ぐモデル」ではなく、「外国のカジノ業者が日本人から金を稼ぐ計画」に変わっているのです。

 

先に述べたように、(元)警察官僚が管理するパチンコや、政府が所管している公営ギャンブル(競馬とか)と違って、カジノは完全な「民間賭博」です。

カジノ事業者は「一切の躊躇なく」、日本人の金を「むしり取れるだけむしり取る」方法を、「全力で」実行してくるでしょう。当たり前のことです。

カジノ業者が社会に貢献してくれるとか、納付金を納めてくれるとかは、むしり取られたあとの話で、メリットとして掲げるのはそもそも議論の順序が違います。

 

さて、大阪カジノが日本人を主要顧客に想定しているとなると、その内容は日本人の嗜好に合わせた日本人好みの仕様に仕上げられると思われます。

 

■日本の「パチスロ」の特異性

話は変わりますが、日本人による「魔改造」という俗語があります。
日本人は海外から入ってきたものや文化に日本独自のアレンジを加えることに長けています。
魔改造は食文化などで顕著に見られ、カツカレー、日式ラーメン、ナポリタンスパゲッティ、焼餃子、テリヤキライスバーガーなどが代表的な例と言えるでしょう。

個人的な意見ですが、この例はスロットマシーンにも当てはまると考えています。

 

現在の日本のパチスロは当たり絵柄が描かれたドラムリールよりもキャラクターなどで演出される液晶画面の方が大きいのが当たり前となっています。海外のスロットマシンにはまずないデザインや仕様です。

単純に「当たりか外れか」がシンプルに表示されるのではなく、大当たりに至るまでにアニメやビデオゲームのキャラクターが物語の一シーンのように登場し、目がくらみ耳をつんざく光と音の演出が人間の脳に直接刺激を与え続けます。完全に「洗脳」の領域です。メーカーはこの演出を脳科学に基づいて最も刺激が強くなるように設計していると認めています。

 

冒頭に挙げた書籍の中で大変おもしろかったのがパチンコがアニメだらけになった理由(わけ) 安藤健二著」という本でした。

 

本書の内容を簡潔に紹介すると次のようになります。

保通協の縛りによって台の差別化が難しくなったパチンコ・パチスロメーカーは、アニメや著名人をモチーフに起用することによって売り上げを伸ばす道を模索しました。折からの液晶画面の普及や台の高性能化もその流れを後押しすることになります。結果、美空ひばりからエヴァンゲリオン、果てはちびまる子ちゃんの作者までパチンコ化されてしまうというとんでもない状況が生まれました。

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パチンコ「さくらももこ劇場コジコジ2」 画像出典:ニューギン公式サイト

 

一方で、市場が低迷し業界全体がジリ貧に陥っていたアニメ業界には、版権をパチンコに卸すことで糊口を凌ぐという構図ができあがってしまいます。

表立ってはあまり語られないということですが、社会現象化した某セカイ系現代SFロボットアニメもパチンコのタイアップ料収入によって劇場版を制作できたと本書には記されています。

また某世紀末拳法マンガの原作者はパチスロ機のヒットで数百億円のタイアップ料を手にしたと言われています。

(一部の)アニメ関連企業が本業のアニメ制作ではなくパチンコマネーに依存して存続できているというのは公然の業界タブーとなっているようです。

 

ともあれ、それぞれの業界の利害が一致することで、このビジネスモデルは急速に拡大することとなりました。

 

その後、アニメ等を題材にしたパチスロ(パチンコ)機の演出はどんどんと進化し、結果、世界に類を見ない日本独自のスロットマシンが生まれることとなりました。

 

大当たりを事前に告知する「前兆システム」や、それを盛り上げる強烈な音と光の演出、脳科学に基づいて中毒性(依存性)を最も高めるように設計された確率設定、中でも機械を相手にした「無機質な遊び」をキャラクターによって「コンテンツ化」したことは、コンテンツ大国・日本がギャンブル機器に起こしたゲーミング・イノベーションと言えます(ほめてません)。

 

■日本版カジノはパチスロ化するのか

話をカジノのスロットマシンに戻すと、これら日本のパチンコ・パチスロで培われたノウハウは、恐らく日本版「機械式ゲーミングマシン」にも存分に生かされることになるでしょう。

 

いやカジノのスロットマシンは日本のパチスロと全く異なり、バックグラウンドやネットワークの処理の違いから、日本のパチスロ技術がカジノのマシンに入り込む余地はないという意見もあります。海外メーカーも日本メーカーの参入を排除する方向に動くでしょうから、確かに参入の壁はあるでしょう。

しかし、実際にセガサミーなどの国内パチスロメーカーやゲーム開発会社はカジノへの参入を模索しています。(セガサミーのカジノ運営事業への参入は横浜市のIR撤退により頓挫しましたが)

 

あくまで私見に基づく私の想像でしかありませんが、日本の官僚の「先例主義」、政界における「パチンコ業界」からのロビイング、海外マシンのローカライズの壁、これまで日本のメーカーに蓄積されてきたノウハウや版権などの知的資産、1施設6400台のためだけに全くゼロから製品を開発する非効率性、などから考えると、日本のカジノの機械式ゲーミングが「アニメだらけ*」になることは十分考えられると思います。(*アニメにはゲームなど日本のサブカルチャー全般を含む)

 

要するに「ガワのデザインや演出などはパチスロを流用しつつ、払い出し枚数や方法が違う」とか、そんな感じになるのではないかということです。

 

前述したパチンコの仕様を管理する保通協の内規では、賭け方、絵柄配列、内部抽選確率、抽選の方法、出玉、ゲーム数の規制などが非常に細かく決められています。
一方カジノではそれがどのように規制されるかは現時点ではわかりません。

 

カジノ管理委員会の規制内容によっては、例えば8枚がけ10枚がけOK、プレイ間ウェイト無し、小役一回100枚、大当たり一撃10,000枚、JACKPOT(他人の当たりまで貯留)あり、24時間営業、もちろんチップは1枚500円~100万円とかもアリな仕様になる可能性がある……かどうかはわかりませんが、そうなったら恐ろしいことですね、という話です。

 

海外のスロットにはジャックポットで数十億円という配当が存在します。

この射幸性にオンする形で、ゲームの流れ自体をコンテンツ化してユーザーを飽きさせないように引き込み、光と音とガチャシステム(いわゆる先読み、前兆)を規制しないで垂れ流せば、この世で最も凶悪な「悪魔のルートボックス」が誕生するのではないかと感じています。

冗談や笑い話ではありません。

日本国内のカジノはヘタをすると大阪一か所とかになり、寡占化は間違いありません。

そうなると恐らく業界の自主規制も働きません。

唯一抑止力を発揮できそうな行政は、大阪ではすでに機能不全に陥っています。

 

文字通り「最後の砦」として、政府ならびに国会議員の皆様方におかれましては、カジノ管理委員会での議論をしっかり行っていただくとともに、ゲームの仕様を厳しく管理することはもちろん、産業政策、経済安全保障、財政、社会倫理などから多面的に法的な網をかぶせていただけることを切に願うばかりです。

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悪魔を追い払うためにインク壺を投げるマルティン・ルター 出典:いらすとや

■追記

本投稿にご関心をお持ちいただいた方は、是非とも私の他のエントリーもあわせてご覧いただければと思います。

nomuratomoaki.hateblo.jp

osaka-research.net

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大阪カジノ・IR 整備計画の何がヤバいのか

■カジノ・IRの誘致を目指す大阪の現状

今、大阪ではカジノ・IR整備の議論が進んでいます。


「IR(Integrated Resort)」とは、ホテルや会議場、展示場、ショッピングモール、エンターテインメントやレジャー機能などを備えた大型の施設で、「統合型リゾート」とも呼ばれます。

世界のIRにはカジノを併設している場合が多くIR=カジノというイメージがありますが、カジノはあくまでIRの中の一施設に過ぎません。カジノのないIRも存在します。

 

さて日本では、2006年の観光立国推進基本法の制定、2008年の観光庁の設置以降、経済振興と外貨獲得を目的として「インバウンド=訪日外国人旅行者の獲得」に力を注いできました。
そしてその延長線上に成立したのが2018年公布のIR整備法(特定複合観光施設区域整備法)です。この法律は地域振興を目的にIRを整備する中で日本国内にカジノ開設を認めるものでした。

 

2018年は訪日外国人旅行者数が右肩上がりに増加していた時期で、IR整備には国内のいくつもの都市が手を挙げました。その中で大阪は最も積極的に誘致に取り組んで来た都市です。

 

大阪において、カジノはもともと2024年、大阪・関西万博が開催される2025年の前年に開業する予定でした。しかしこれは当初からかなり無理のあるスケジュールと言われていました。

それに加え、2019年末に新型コロナウイルスが発生してしまいます。

世界の観光地や観光ビジネスは壊滅的な打撃を受けることとなり、各国のカジノも例外ではありませんでした。
この余波をまともに受ける形で、日本のカジノに進出を検討していた事業者の撤退が相次ぎます。
大阪進出を検討していたカジノ業者も当初は7者ありましたが、結局最終公募に手を挙げたのは一者のみという結果となりました。

■カジノ誘致にのめり込む大阪維新と危うい計画

カジノ誘致に異常なまでの執着を見せてきた維新の会が首長を占める大阪府・市は、ただ一者残った「MGM・オリックス コンソーシアム」に撤退されないよう、あり得ないほどの条件の緩和、優遇措置、公金による経済的支援策を打ち出します。

 

大阪の万博・IRの会場予定地は、大阪湾に浮かぶ「夢洲(ゆめしま)」という人工島です。
ここは本来廃棄物等の最終処分場で、処分地として使用が続けられている土地でした。島の一部は未だ埋め立てられておらず海面が残っているような状態です。
廃棄物で埋められた土地ですので、当然土壌汚染の恐れがあり、地盤は極めて軟弱で、防災対策もほとんど取られていない場所です。
そもそも人を集めたり大きな建築物を建てることを想定して整備された島ではありませんでした。

立地も非常に悪く、大阪市街からのアクセスは不便極まりない位置にあり、国土軸からも観光動線からも大きく外れています。

観光地としては「最悪」と言って過言ではない条件の土地です。

 

この劣悪な条件のもとでカジノを開業してもらうために、大阪府市はすでに間接的な経費も含めて4000億円以上もの税金を夢洲整備に投じてきました。

さらに今年に入り大阪市は、788億円という巨額の土壌対策・地盤改良費を「事業者の言い値」で支払うことを決定し、批判が集中しています。

ある大阪市会議員は「大阪市のカジノ事業者への便宜供与は異常だ。財政規律などもはや存在しない。底が抜けた感じがする」と語りました。

 

通常であれば、一民間事業者に向けたここまでの公金支出が許されるはずがありません。
しかし大阪市松井一郎市長は「カジノが開業すれば年間550億円の納付金が入って来る。リターンは十分だ」とその理由を強弁します。

ところがこの550億円という金額は極めて根拠の薄弱な、全く信ぴょう性のない数字です。
詳細な制度の説明は別に譲りますが、この550億円の納付金を実現するためには、USJを上回る客をカジノに集め、JRA中央競馬会)の年間売上の「倍以上」を夢洲の一施設で売り上げ、シンガポールの二つのカジノをあわせたよりも多い粗利を稼ぎ出さなければなりません。どう考えても不可能です。

 

この「あり得ないほど盛りに盛った数字」は事業者が自ら提示してきたものです。議会でそのおかしさを指摘された市のIR推進担当者は「市側では検証も修正もしていない」と平然と答えたということです。もはやIR事業者に不利になるようなことは一切行わないつもりなのでしょう。

 

行政としての責任を果たしていないばかりか、大阪府市は自治体として市民のくらしや生命や将来を守るための税金よりも、カジノ業者への便宜を優先したということです。

信じ難いことですがこれが「現代の大阪」の現状です。

■展望のないカジノ事業、しかしいったん契約すると後戻りできない

逆の見方をすれば、ここまでしないと大阪のカジノは進められないほど現実は厳しいということです。

コロナ以前にIRの誘致を検討していた北海道、東京、横浜などは軒並み誘致を断念しました。
現在、大阪以外の候補地である和歌山、長崎についても整備計画が難航しています。

また、収束の兆しが見えないコロナ禍を受けて、世界のカジノ事業者はオンラインへと軸足を移しています。

主要客と見込んでいた中国人富裕層は、国内での締め付けが厳しい上に、わざわざ規模も内容も利便性も劣る大阪のカジノには足を運んでくれそうにありません。

その他、カジノ以外のIR機能の縮小、土壌汚染と脆弱地盤、災害リスクなど、大阪カジノ・IRが失敗すると確信できる要素はいくらでも挙げられます。

 

ところが、大阪府市とカジノ事業者の契約内容には、これらの課題が生じたときにカジノ事業者はいつでも撤退できることに加え、(土地所有者である)大阪市側の費用負担で、事業のための対策や改善を求めることができるとうたわれていることが明らかになり、その極めて不平等な内容に大阪府民、市民から強い批判の声が上がりました。
それが現在の状況です。

ちなみにカジノ営業の契約期間は「35年」。さらに30年以上延長することが可能となっており、いったん契約してしまうと解約するのは難しく、大阪は半世紀以上に渡ってカジノに縛られることとなってしまいます。

 

先述したように、市街地から遠く離れた海上の孤島に、24時間営業のカジノをポツンと(夢洲の面積390haのうちIR予定地は60ha)設置し、世界から何千万人の客を集めるという荒唐無稽な事業計画が成功するとは到底思えません。

 

しかしそれを承知しているかのように、大阪IR株式会社の共同代表を務めるオリックスの高橋豊典氏は、自社の決算説明会および大阪市会で開催された参考人招致の場で、「日本人がカジノの主な顧客である」ことを認めました。

要するに今の大阪カジノ計画は、IR整備法が目指した「地域振興と外貨の獲得」とは全く逆の、「外国企業による日本人からの搾取」を進めるだけのものになってしまっているのです。

 

整備計画では、大阪カジノの売上額を(にわかには信じられませんが)7兆円と想定しています。

大阪府GDP(府内総生産)は40兆円弱ですが、その5分の1を博打に費やすようなことを許せば、大阪の経済は間違いなく壊滅してしまいます。

さらに、ギャンブル依存症や治安が悪化することも、開業前の段階から事業者は明確に認めており、数字に表れない「負の影響」も計り知れません。

 

「子どもたちの未来」どころか、「孫」の代まで禍根を残す「大阪カジノ・IR計画」は絶対に進めてはなりません。

一人でも多くの府民、市民が「強い反対」の声を上げ、メディアや政治家を動かすことが急務です。

大阪カジノ・IR進出を巡るマカオのカジノ事業者の駆け引きについて

堺市議会議員の野村ともあきです。

先日アップした「保守派のための「反カジノ」論 番外編」にはたくさんのアクセスをいただいております。ご覧いただきありがとうございます。

記事の中でパチンコ業界については色々参考文献を挙げたのですが、カジノの「ジャンケット」に関する文献はないの?というお問い合わせをいただきました。
がっつり探したわけではないですが、現在進行形の事象なので、紙の文献はあまりないようです。私も当該記事を書くのにネットのニュースを中心に情報収集をしました。

というわけで、補足で「ジャンケット」についてもう少し詳しく書いておきたいと思います。

 

ジャンケットはカジノにおいて主に「誘客仲介・送客業務」「賭け金の貸付・回収」「場外カジノの運営」といった重要な役割を担います。

「誘客仲介・送客業務」というのはカジノの上客を囲い込んで、様々なプレミアムを付与しながらカジノに招くための業務です。食事や宿泊がタダになったり、現地までの航空チケットが贈られてきたりと、至れり尽くせりのサービスでVIP客の足をカジノに運ばせます。

「賭け金の貸付・回収」というのはそのままの意味で、負けが込んでいたり、もっと賭けたいと思っている客に資金を貸し付けます。ジャンケッターはもちろん客の資産状況や信用情報を保持しています。

「場外カジノの運営」とは、実際のカジノ以外の場所でカジノを開帳し、遊ばせるサービスです。一晩に何百万、何千万、何億円と金を使う超VIP客に特別な部屋や別の施設を用意するものです。

 

ところが、日本ではこのうち貸付行為と場外カジノは禁止される方向で議論が進んでいます。今後の動向には注目が必要ですが、「誘客・送客」のみではジャンケットビジネスはまず成り立たないと思われます。

 

【資料】首相官邸IR整備推進会議 第7回 資料「いわゆるジャンケットについて」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/ir_promotion/ir_kaigi/dai7/siryou3.pdf

 

マカオのカジノ事業者はだいたいジャンケット業者と組んでカジノを運営しています。
大阪に進出するMGMは、マカオではスタンレー・グループのSJMと組んでカジノを運営しています。

スタンレー・グループというのはマカオのカジノ王だった故スタンレー・ホーの一族が経営する各企業です。

 

一方、当初大阪に進出予定だったカジノ事業者のサンズはジャンケッターのサンシティグループ(太陽集団)と組んでいました。

サンシティというのはスタンレー・ホーに続いてマカオで急速に勢力を伸ばした、アルヴィン・チャウが率いたジャンケッターでした。

アルヴィン・チャウは、マカオの最下層からマフィアの一員となり、カジノの見張り番という駆け出しから、40代でマカオのカジノ王にまで上り詰めたという、まるでピカレスク映画の主人公のような「アウトロー立志伝」中の人物でです。

 

マカオの最下層からマフィアを経て賭博界の大物にのし上がったアルビン・チャウ氏
https://adkd.net/culture/2021/11/macau-gaming-king-arrested/

 

サンズはかなり早い段階から日本進出を進めていましたが、サンシティが独自で北海道や和歌山、大阪への進出を模索し始めたためか、2019年夏にサンズは大阪からの撤退を表明します。この時期は新型コロナ発生前ですので間違いなく経営上の判断です。(サンズはさらにその後のコロナ禍で、2020年5月にじゃ日本からも撤退を表明しました)

 

ところがその後、2021年11月27日に違法賭博と資金洗浄の容疑でアルヴィン・チャウが逮捕されます。この衝撃的なニュースによって、マカオはもちろん全世界のカジノ業界に激震が走りました。
サンシティの株価は暴落。マカオのカジノの約半分を仕切っていたサンシティの崩壊で、マカオのカジノ業界は大混乱に陥ることとなりました。

 

一方、今年2022年の6月にはマカオのカジノ・ライセンスの更新が迫っています。
すでに公表されているその内容は、ジャンケット業務を大幅に規制するものとなっており、マカオのカジノ事業者に大きな影響を与えることは必至です。

 

マカオカジノ法改正案の内容が明らかに…ライセンス最多6枚、契約期間は最長10年など
https://news.yahoo.co.jp/articles/9ff01b39273e59a0d5118cc161e8deff19675600

 

習近平は中国国内のビデオゲームサブカルチャーに対しても厳しい規制を進めていますが、カジノもその対象になったということが伺えます。

すでに世界のカジノ業界は、新型コロナの影響で壊滅的なダメージを受けていましたが、この規制強化でマカオのカジノ事業の先行きは極めて不透明なものとなりました。

 

そして、マカオのカジノを取り巻く環境の激変は、間違いなく各カジノ業者の日本進出にも影響します。

もともと財務基盤が強くないMGM、サンシティの崩壊でシェア拡大を狙うスタンレー・グループ、サンシティを失ったサンズの動向など、それぞれの思惑が複雑に絡み合い予断を許さない状況が続いています。

 

MGM・オリックスコンソーシアムが大阪進出に際しより有利な条件を引き出そうと躍起になっているのも、このような背景があると推測されます。

 

今後、大阪へのカジノ誘致を決める議会議決が成立したとしても、カジノ開業までは紆余曲折があることでしょう。

保守派のための「反カジノ論」(その2)夢洲の地勢が抱えるリスク

※本記事は「おおさか調査委員会」に寄稿した記事の一部に加筆修正し新たに編集したものです。

 

カジノ・IRの用地である夢洲は廃棄物や建設残土の処分場として埋め立てられてきた人工島である。人工島はその地勢上、避けられない深刻なリスクを二つの面から抱えている。一つは「地盤の脆弱性」、もう一つはそれに起因する「災害リスク」である。

 

夢洲の地盤は大きく三層に分けられる。人工的な埋立層と、その下にある海底を形成している沖積層、さらにその地下の洪積層である。

人工の埋立層は廃棄物や焼却灰、浚渫(しゅんせつ)土砂で埋め立てたもので、震災時に液状化の危険性が極めて高い。大阪府の「南海トラフ地震対策 震度分布・液状化の可能性 詳細図(2017)」によると、夢洲のほとんどの場所で液状化の危険度を示すPL値が20~25以上となっており、液状化の危険が「極めて高い」と指摘されている。

 

液状化が起きると、道路が使用できなくなるばかりか、建造物が沈んだり傾いたりし、水道管などの地下埋設物が寸断されるなどの被害が生じる。
南海トラフ巨大地震等で夢洲が被災すると、ほとんどのライフラインは断たれ、避難も救助もできなくなることが容易に予想できる。

 

大阪市は、万博およびカジノ・IRを誘致する以前までは「夢洲液状化の危険はない」と大阪府の調査と正反対の主張を行っていたが、IR事業者が決定し契約交渉を行う段階で突如、液状化の可能性を認め、土壌汚染の対策費とあわせ788億円もの公金を支出することが決定した。

しかしこの788億円はIR事業者側の独自の積算に基づく金額で、今後実際に土地の改良にいくらかかるのかは不透明である。しかもIR建設区域のみの額であり、夢洲の他の区域でも同様の対策を行うためには、現時点で1580億円もの費用が必要と試算されている。が、おそらくこの程度の金額では収まらないと思われる。
当初の目論見より費用が膨れ上がった公共開発事業の例としては関西空港東京ディズニーランド豊洲市場辺野古基地など枚挙に暇がないからだ。

 

夢洲と同じ人工島であった関西空港でも当初の想定を大幅に上回る建設費が投入された。その最も大きな要因が沖積層を中心とした「大阪湾の極めて軟弱な地盤」であった。
軟弱地盤の改良にはサンドドレーン(SD)、およびサンドコンパクション(SPC)という工法が用いられる。これは地盤に砂杭を打つことで地盤層の排水を図る工法である。関西空港では約100万本のサンドドレーンが20メートル以上の深さまで打設されたということである。
それでも関西空港は10年で10メートル以上沈下した。軟弱な粘土層の上に埋土や巨大建築物を設けるとその重みで地盤が圧密沈下する。10メートルという沈下は大阪湾の地盤がいかに軟弱であるかを如実に示していると言えるだろう。

 

当初から大規模な建造物を建設することを想定して埋め立てが行われた関空島ですらこの状況である。建設当初の目的が全く異なる廃棄物処分場として埋め立てられてきた夢洲に巨大な建築物を造ることがいかに不適格であるかは説明するまでもない。
大阪市夢洲の沈下を「50年で150cm」と想定しているが、この想定の範囲内に収まるかどうかも予測不能である。

 

その他の土地に関しても軒並み建設費は膨張している。東京ディズニーランドは当初650億円が1800億円に、豊洲市場は990億円から2752億円、辺野古基地は3500億円から9300億円(現在も工事中)へと膨れ上がっている。それほど埋立地の建設には想定外の支出が伴うということだ。

 

夢洲開発で大阪市が負担することとなっている788億円の土壌対策費も間違いなく増額されるだろう。しかもこの788億円という金額は、業者側の提示による根拠が希薄なものである。現状、夢洲の土壌調査は済んでいない。今後どのような汚染や地盤の問題、災害リスクが判明するかは未知数である。


しかも、「業者側の提示額」であるにも関わらず、いったん契約されると、額の変更が可能となっているのである。一応「合理的な範囲内において」という但し書きはあるが、合理的がどの程度なのかは判断がつかない。

 

通常の公共事業であれば、まず行政側が積算を行い金額を決定した上で入札を通じて価格の適正化を図る。ところが今回は、事業者が言ってきた額を債務負担行為(事前に借金をして建て替える)で支出し、後から業者が都合に応じて価格を変更することが可能という、あり得ない契約内容となっているのである。

そもそも地盤改良や土壌汚染対策は利用する事業者側が負担するのが普通である。東京ディズニーランドでも事業者負担で地盤改良が行われた。

788億円という巨額の公金支出がこのような形で決定されて良いわけがない。議会は絶対にこんな予算を認めてはいけない。なんのために議会があるのか。

 

さらに「液状化」「地盤沈下」「軟弱地盤」はそのまま「災害リスク」として跳ね返ってくる。

液状化や圧密による地盤沈下は、津波、高潮、浸水対策にも直接影響する。

 

大阪市は、万博・IRの会場敷地が津波水位より高いため危険はないとしている。しかし、先に述べたように関西空港は10メートル以上地盤沈下し、阪神淡路大震災で神戸市のポートアイランド液状化によって2メートル以上沈下した。東北大震災では想定を超える津波が押し寄せ防潮堤が倒壊した。2018年9月の台風21号では過去最大の高潮により咲洲で浸水被害が生じた。

2020年、大阪市は被害想定を見直し、夢洲の護岸を1~2メートルかさ上げする決定をしたが、この程度の対策で夢洲の災害リスクが払拭されるかは疑問であると言わざるを得ない。

 

また軟弱地盤は地震の「揺れ」に対しても非常に脆弱である。東日本大震災では震源から770km離れた咲洲庁舎(WTC)が長周期地震動による共振現象を起こし約10分間に渡って大きく揺れた。これを軽減するためには建物に制振補強をすることが必要となるが、これも様々な建設コストに跳ね返ってくることになるだろう。WTCでは東北大震災後の補強工事に10億円以上が費やされている。

 

以上、夢洲という土地が、物理的にも、防災の観点からも、いかに脆弱で危険であるかを見てきた。言わずもがな、災害リスクの高さは事業のリスクにも直結する。

 

沖合の孤島である夢洲はアクセスも非常に悪く、夢洲への陸上ルートは夢舞大橋夢咲トンネルだけである。それぞれ舞洲咲洲からのアクセスになるので、本州から渡るためには橋かトンネルを2回経由しなければならず、移動距離も非常に長い。

平時にIR・カジノへ行くためにも極めて不便であるし、発災時に避難することも、救助に向かうことも非常に困難である。

 

以上、夢洲という人工島にはらむ地勢的なリスクを見てきた。はっきりと申し上げて、こんな場所に年間2000万人を集める施設を建設するのは「狂気の沙汰」である。

保守派のための「反カジノ」論(番外編)大阪カジノ・IRに関するだいぶニッチなネタ

堺市議会議員の野村ともあきです。

「保守派のための「反カジノ」論」の続きとして書くと告知しておりました「地勢リスク」については明日以降に書けたら書くようにします。

ここ数日、大阪カジノ計画について調べておりましたが、はっきり申し上げてとんでもない計画内容で、調べれば調べるほど首をかしげたくなるような項目が出てきて、憤りを感じるとともに、めまいがしております。

インターネットの別の媒体にもまとまった「カジノ批判」を書いたのですが、完成原稿は多分6000字くらいの長さですが、推敲する前は12000字くらいありました。それでも書きたいこと(書かなければならないこと)の半分くらいしか書けてない感じがします。

 

そこで少し予定を変更して、本稿では大阪カジノに関して一般的な原稿記事に書くにはちょっとニッチでマニアックだけど、お蔵入りさせるのはもったいない話を書いておくことにします。

下書きなし、推敲なしですので、雑文乱文はご容赦を。

また予備知識がないとわからないことも多々あるかもしれませんが、そこはご自身でググってください。文末に参考書籍も記載しました。

■ジャンケット規制が進むマカオ、中国人ハイローラーは大阪に来るのか

別稿で、大阪カジノの規模(台数)から逆算しても入場者や売上の目標は達成できないと書いた。でも、カジノに詳しい方からは「カジノを売上の多くは桁外れの金を賭けるハイローラーと呼ばれる客(大王製紙の井川さんみたいな人)が生み出しているから、一般フロアは客で埋まる必要はない」という指摘があるかなと思った。

話が専門的になり過ぎるのでそこには書かなかったが、私はハイローラー客も大阪には呼べないんじゃないかと考えている。

マカオシンガポールなどのカジノの収益構造は確かに上記の通りだし、恐らく大阪IRの基本構想が作られた2019年あたりは、誘致コンサル業者もカジノ事業者もそのつもりで事業を計画していたと思う。

(当初の)大阪カジノ・IRは、旺盛な中国人訪日観光客を当て込んだものだったので、中国人超富裕層をハイローラーとして呼んでくることが大阪カジノの成否を握っていたのは確かである。

カジノへの誘客業務をジャンケットと言う。ジャンケット業者(ジャンケッター)は誘客以外にも色々な付帯業務を代行し、カジノ経営の重要な役割を担う。

マカオにもサンシティやスタンリーグループ、タクチュンなどの有力なジャンケッターが存在する(した)。

ところが昨年2021年11月に、最大手のサンシティグループのトップが逮捕されるという衝撃的なニュースが報じられた。一説には「香港の次」を模索する、習近平・中国中央政府の思惑があったとも言われている。

一方、マカオのカジノライセンスの更新が今年(2022年)の6月に控えており、そこでカジノとジャンケットに関する大幅な規制強化が行われることがすでに発表されている。

このサンシティグループの消滅と規制強化は、マカオのカジノ業界の勢力図にも大きな影響を与えそうで、その余波は日本のカジノ・IRにも及びそうである。

実は日本のジャンケット業務は非常に規制がきつく、恐らくジャンケッターにとってもカジノ客にとっても魅力的でも利便性が高いものでもない。

中国だろうが中東だろうが、世界中どこにでも行ける「超」のつく富裕層であれば、わざわざ大阪を選ぶことはしないのではないだろうか。

■大阪・夢洲にカジノとしての優位性はあるか

優位性ははっきり言って「ない」。

  1. まず非常に大きな「言葉の壁」がある。シンガポールマカオも英語、中国語が公用語並に通じるが、一般的な日本人にはどちらも通じない。
    ディーラーは高い技術を要求されるが、その上、英語や中国語まで話せる人材となると日本で育成するのは相当ハードルが高いだろう。というかそこまでスキルがあったら他の仕事に就くよね。
  2. さらにシンガポールマカオも、すでにIRが整備されて長い年月を経ており、町の機能がほぼ成熟化している。財政が豊かなので公共サービスも行き届いている。インフラは高度に発達し、食事、買い物、カジノ以外の娯楽も豊富である。
    対して夢洲は、現在上下水道すら十分に敷かれておらず、店はコンビニが一軒あるだけ。町がないから道路もなく、鉄道もまだ敷かれていない。もっと言えば地面すらまだない。
    万博が終わってからカジノが開業するまでに先行進出する商業施設も恐らくないだろう。
  3. シンガポールマカオもカジノの立地が非常に良い。マカオには約40軒のカジノが密集しており、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズはアジア有数の観光地のど真ん中にある。シンガポールチャンギ空港は世界トップクラスのハブ空港である。
    対して夢洲へのアクセスは非常に悪く、国土軸からも観光動線からも大きく離れている。
  4. 気象条件が厳しい。シンガポールは赤道直下、マカオは緯度11度くらいで沖縄よりはるかに南方にあり、ともに温暖な気候である。有名なマリーナ・ベイ・サンズのプールは一年中泳げる。
    対して夢洲は、日陰がないため夏は異常に暑く、海辺のため吹きさらしで冬は寒い。雨期があり、台風が多くて、地震の発生確率も高い。ちなみに隣の咲洲は、770キロ離れた場所で起きた東北大震災でも被災した。
  5. シンガポールは国際的な金融拠点としての地位を確固たるものにしていて、カジノ以外の目的でも世界中から訪れる外国人がいる。近年はやや社会情勢が不安定だがマカオと香港も同様である。
    大阪には国際的な専門機能があるわけではなく、観光以外にビジネス目的で外国人が訪れるケースは稀である。

■スロット6400台は日本人の嗜好? パチスロメーカーへの忖度?

大阪のカジノには6400台という桁違いのスロットマシンが設置される計画となっている。なぜこんなに機械式のゲーム機が多いのか明らかにされていないが、次のような理由が考えられる。(すべてがスロットマシンかは未定、実際はテレビポーカーみたいなものも含まれると思われる)

  1. 「優位性」の項でも書いたが、ディーラーは高いスキルが必要な職業であり、人件費も高い。大阪カジノの異常に高い収益を達成するためには、対人のテーブルゲームより機械式を増やす必要があった説。
  2. パチスロという娯楽がすでに定着している日本人の嗜好にあわせた。
    別稿でカジノの主要顧客は訪日外国人から日本人へと変わったと書いたが、中国人に人気のゲームは対人のバカラ、日本人が好きなのが機械式のギャンブルである。まさかパチンコを置くわけにもいかないので、パチスロに近いスロットマシンを多く設置することになったのではないだろうか。
    ちなみにマカオなどの平均的なカジノのスロットマシンの設置台数は1000台ほどなので、いかに大阪カジノのスロットマシンが多いかがわかる。
    比較の対象になるかわからないが、国内の郊外の大型パチンコ店の設置台数が1000~1500台くらいである。南大阪の人にしかわからないと思うが、私の地元近くにある松原市丹南の昔のパチンコ村(現・パチンコ123)は多分3000台くらいあるので、あれの倍くらいかと勝手に想像している。
  3. カジノのスロットマシンとパチスロは全然違うものだと思うが、それでも日本語化や日本人に合わせたデザイン、コンテンツなどのローカライズは必要なので、日本のパチスロメーカーも今後大きく関わってくると思われる。
    本邦で強い開発力と営業力を持つパチスロメーカーを念頭に置いた施設構成である可能性は高い。

■パチンコ業界から学ぶ「カジノ利権」

ネガティブな話なのであまり表立って言われないが、カジノとマネーロンダリングは切っても切り離せない関係である。カジノでなぜ巨額の金が動くのかと言うと、マネーロンダリングがあるからである。

違法なビジネスで儲けた金をカジノでチップに交換しそれをもう一度現金化すれば違法な資金が洗浄されてしまう。

地下マネーを容易にロンダリングできる環境があるということは、それだけ地下ビジネスが活発化するということである。

日本のカジノがマネーロンダリング対策をどのようにするのかはあまり聞かれないが、この辺りの対策は国際的にも非常に重要である。

ところで近年はだいぶ浄化されたが、30年くらい前のパチンコは不正や脱税、アングラの温床だった。

パチンコを認可、検査する機関には、所管する警察庁や警視庁から警察官僚が天下り、政界では族議員が暗躍した。

店が電子部品を取り付けて台を操作するのは当たり前、脱税もやりたい放題、地下化した資金は北朝鮮に流れていた。ピークの1990年頃には年間600億円もの資金が北朝鮮に渡ったとある。それらはノドンやテポドンの開発費用となった。

恐らくこれと同様のことはカジノでも起こり得る。

 

大阪カジノで動く金は年間7兆円と推測されている。7兆円もの金が動けばそれに群がろうとする輩も大量に発生する。表の業者以外にも、反社半グレビジネスもはびこるだろう。国際的な犯罪の温床となることも考えられる。
整備計画では、すでに340名の警察官の増員が必要とされている。かかる経費は33億円であるが、これで十分かどうかはわからない。

 

以上、大阪カジノ・IRに関するニッチなネタを書きました。

蛇足ながら、誤解なきよう最後にお伝えしておきますが、私は別にギャンブル好きでもパチンコ好きでもありません。これらのネタは今回のカジノについて調べる中で知り得た知識です。悪しからず。

膨大なインターネットの情報も元にしておりますが、参考書籍も挙げておきます。

  • マカオのジャンケット事件に関しては「スタンレー・ホー」「アルビン・チャウ」などで検索してください。
  • 「闇の権力 腐蝕の構造」(一ノ宮成美・著)
  • 「熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録」(井川意高・著)
  • 「パチンコ「30兆円の闇」(溝口敦・著)
  • 石原慎太郎はなぜパチンコ業界を嫌うのか」(POKKA吉田・著)
  • 「なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか」(若宮健・著)
  • 「パチンコに日本人は20年で540兆円使った」(若宮健・著)
  • パチンコがアニメだらけになった理由」(安藤健二
  • 雑誌「紙の爆弾」3月号 大阪カジノ・万博 暴走する維新政治
  • 映画「オーシャンズ11」(2001)

保守派のための「反カジノ」論(その1)事業上の課題について

大阪で誘致が進む「カジノを含む統合型リゾート施設」(以下、カジノ・IR)の関連議案が大阪府議会、大阪市会に上程され、審議が続いている。

3月14日現在、審議は山場を迎えており、今月末の本会議で議案が可決されると、大阪へのカジノ・IRの整備が事実上「確定」する。

その後は、議会、住民らの関与はほとんどできないまま、2029年末(予定)の開業まで一気に進む公算が高い。

 

2029年のカジノ計画がまさか今年に決まるとは知らない方も大勢いるようで、説明すると驚かれることが多い。また、あくまで大阪市内の話だと思われているのか、大阪市以外の住民の方の関心は著しく低い印象を受ける。

 

結論から言うとこのカジノ整備計画は、事業的にも、政策的にも、防災の観点からも、倫理的な側面からもかなりマズイことになっていて、「絶対にやったらアカンレベル」の内容である。

 

しかしながら、大阪府・市の議会構成的に、この流れを止めるのは難しそうだ。
大阪府市の議会で過半数を占める維新と公明党会派はカジノ・IRの推進派である。
自民党は府市両議会と会派内で賛否両論見られるが、国政で自党が進めてきた政策だけに正面切って反対しづらいジレンマがあるようだ。
現状、カジノを強く批判しているのはリベラル・左派陣営のみであり、議決が目前に迫る中、彼らの反対運動は熱を帯びている。

 

このような背景があるためか、「カジノを推進しているのは保守派で、反対しているのは左派」という漠然としたイメージが世間に浸透している。
安倍・菅政権の影響も少なくないだろう。

 

(安倍・菅・維新が保守なのかという議論はさておき)私が別稿で繰り返し書いてきた通り、「経済的な政策志向」と「思想信条」は直接的にイコールで結ばれるものではない。
むしろ「カジノ推進」は誰がどう見ても「保守主義」に根ざした政策ではないと断言できる。

 

理由は一言で済む。

大阪のカジノは「日本人の不幸の上に成り立つ事業」だからだ。

 

現状、大阪で進められているカジノ政策は、『外国人(というか中国人)を日本にどんどん呼び込むことを目指して、外資を含むカジノ企業に土地を最大65年間格安で提供し、ついでに土地の改良費名目で790億円もの公金をくれてやり、電車もインフラも敷いてやり、「博打」の上前で成長を目指す』というものである。

 

絵に描いたような「売国政策」である。

 

これだけでも地獄絵図の様相だが、現在の「カジノ計画」はさらに内容が悪化していて、あろうことか日本人を食いものにしようとする方針に大きく舵が切られているのである。

 

先般、事業者が提示した計画は、当初「外国人2200億円:日本人1600億円」だった収益の想定を「外国人2200億円:日本人2700億円」に変更した。また来場者想定は外国人629万人に対し日本人が1358万人と、完全に日本人をターゲットにした内容へと変更されている。

さらに日本人等国内在住者のみが支払う6000円の入場料収入(国と折半のため都道府県等に入るのは3000円)は、当初130億円だったものが、計画では320億円と約2.5倍に修正された。

事業者は株主向けの説明会で「客は全員日本人、日本人だけでどれだけ回るか、その前提でプランニングを作っている」と述べたという。

 

百万歩譲って、外貨を獲得できるのであれば、経済成長に資する側面もあったかもしれない。しかし今の計画は、外国企業を含んだカジノ業者が日本人から「賭博」で金を巻き上げる事業モデルとなっているのである。

 

「保守」を自認する政治家の皆さん方は、この構図を見てどう感じたか、是非教えていただきたいと思う。

 

事業計画にはカジノの凄まじい売上目標も記されている。
カジノ側の粗利は4900億円、粗利から試算した賭け金の総額は7兆円、来場者2000万人(すべて年間)。にわかには信じ難い数字だが、これだけの人と金が大阪湾の孤島のカジノ一か所に飲み込まれるのである。飲食、物販、宿泊、娯楽消費など、間接的な支出まで含めれば、額はもっと膨れ上がるだろう。
キタやミナミなどの市内経済は大ダメージを受けることは間違いない。

 

地域経済は、衣食住など生活に身近な製品やサービスを、その地域の人が提供し、地域の人が消費することで成り立っている。「経済を回す」というのはそういうことだ。
しかしカジノはこの循環を断ち切り、対価のない賭博行為で人々の日々の稼ぎをかすめ取る。
依存症や借金、生活の破綻、治安の悪化など二次的な負のコストも膨大なものとなるだろう。これは、ギャンブルにハマった個人の「自己責任」や「自業自得」で済む話ではない。そのツケはじわじわと大阪経済を痛めつけ、そこに住む私たちの生活を蝕んでいくこととなる。

 

まさに「亡国の政策」である。

 

どんな理由があれば、このような政策に賛同し、推進することができるのだろうか。

 

さて、この悪夢のような政策に大阪市はすでに2000億円近くを突っ込んでいる。しかもこれは実際に計上された予算支出のみの額である。間接的なコストや本来負担する必要のなかったコスト、これから確実に必要となる関連コストなどを積み上げると、恐らくこの数倍では収まらない額になるのは間違いない。

 

例えば、すでに夢洲のIR以外のエリアの土地改良には1580億円がかかると試算されているほか、夢洲が廃棄物処分場として使用できなくなることで生じる代替地のためのコストや、ギャンブル依存症の対策費、治安悪化に備えて警察官を増員するための経費なども確実に必要とされている。

また、現在すでに着手済みの万博会場の整備や、地盤改良、渋滞解消、災害対策などの経費も青天井で膨れ上がっていくことになるだろう。

 

これに対して、松井一郎市長は毎年550億円のカジノのアガリ(納付金)があることを理由に財政支出を正当化している。

しかしこの額は、カジノ事業者が自ら出してきた売上目標から算出したものでいわば「お手盛り」の数字である。

 

非常に細かくなるので詳細は別稿に譲るが、本当にこの数字を達成しようとすれば、年間7兆円の賭け金が必要であり、365日24時間カジノを満席状態で回す必要があり、来日した外国人旅行者には平均的に買い物や娯楽に費やす以上の額をすべてカジノで擦ってもらわなければならない。

 

無理である。

 

ついでに、賭け金7兆円、粗利益4900億円、入場者2000万人という数字がどれくらいの水準か列挙しておく。

  • 観光庁の統計によると、来訪者数が過去最高を記録した2019年の外国人旅行者が国内で消費した金額の合計は4兆8135億円であった。
  • 中央競馬の売上は3兆円、競艇は2兆円、パチンコ業界の売上は日本全体で15兆円である。
  • MGMが世界で運営する29のカジノ総売上(賭け金合計)は14兆円である。
  • シンガポールのど真ん中にある「マリーナ・ベイ・サンズ」のカジノの粗利益は2400億円、ユニバーサル・スタジオ・シンガポールがある「リゾート・ワールド・セントーサ」のそれは1300億円である。
  • ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの2018年の来場者は年間1430万人だった。

以上の数字を見てどう感じられただろうか。どうか冷静に比較していただきたい。

 

このような荒唐無稽としか言いようのない数字を並べ立てて、それを根拠に莫大な血税を支出する。事業者もそれに加担する行政もやってることは詐欺に近い。

カジノ・IRの事業主体である「大阪IR株式会社」に出資する少数株主、融資を担当する金融機関は、日本を代表する名だたる企業ばかりだが、この「社会的倫理」から大きく逸脱した事業の片棒を担ぐことに疑問や抵抗感はないのだろうか。

 

なお「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画(案)」は下記で公表されている。

大阪府/大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画

 

以上、今回は「事業モデル」を中心に大阪カジノ・IRの課題について解説した。

次回は、会場となる「夢洲」の地勢的リスクについてお示したいと思う。

 

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(追記)本記事は近日中に公開される予定の別サイトに寄稿した記事を元にしています。重複する部分は多々ありますが、当該記事ではより詳細に課題検証を行っておりますので、公開されましたらあわせてご覧いただければと存じます。