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都構想をゼロから理解するその2 いちばんやさしい二重行政の解説

◆二重行政とは何か?

二重行政とは簡単に言うと、「国⇔都道府県⇔市町村」の間で同じような建物や同種の事業がつくられてしまうことです。皆さんの生活に身近な例を挙げると、美術館や図書館や病院や大学などがあります。これらの施設には国立、府立、市立のものが併存しているのは事実です。

大阪市は古くから大都市として発展してきたので、その間に色々な施設を造ってきました。それらの中には、たしかに大阪府が造った施設やサービスと似たようなものがあります。

いわゆる大阪都構想とは、これらの重複施設やサービスが「無駄」なので、大阪市をつぶして、大阪府がまとめて管理してしまおうという考え方です。
これは一見、合理的な考え方のようにも思えます。
しかしよくよく整理して考えると、いくつかおかしな点や矛盾があることに気づきます。順に解説します。

 

◆都構想による二重行政解消はコスパが悪い

ひとつ目は、仮に都構想が二重行政の解消に役立つとしても、「費用対効果=コストパフォーマンス」にまったく見合わないという点です。

都構想のコストについては諸説ありますが、公式の数字+新庁舎建設費を合わせると約1000億円になります(※)。

一方で、二重行政解消の効果額は、色々あって現在は39億円~67億円というのが公式の数字です。ちなみに前回の住民投票で判明した額は、都構想全体の効果でも1億円程度しかありませんでした。

わずか数十億円の二重行政解消のために1000億円をかけて大阪市をつぶす。こんなバカげた話もないと思います。

余談ですが、1000億円がどれくらいの金額かと言うと、都構想賛成派が二重行政の象徴としているさきしまコスモタワー(旧WTCビル)の総事業費よりは少し安く、りんくうゲートタワーの建設費より高いくらいです。

また、賛成派が二重行政の負の遺産として挙げている閉鎖施設群「ラスパ大阪、海の時空館、フェスティバルゲート、ふれあい港館、リフレうりわり」の事業費を全部足しても、都構想のコストの方が高いです。

もちろんこれらの施設のずさんな経営はほめられたものではありませんが、都構想のコストがいかに高いかはおわかりいただけると思います。


◆都構想で二重行政は解消するどころか、もっと悪い『多重行政』が生まれる

二つ目は、都構想で二重行政は解消されないどころか今よりひどくなるという点です。

都構想では、これまで大阪府大阪市の「1:1」だった関係が、大阪府:4特別区の「1:4」の関係になります。力関係は変わっても、「府と市」→「府と区」へと、垂直的な二重構造は変わりませんし、4つの特別区の間でも水平的なお金(財源)の奪い合いが必ず生じます。
1:1だから二重行政で済んでいたのが、5つの利害関係者となれば二重行政、四重行政どころか、「十重行政=ディカプル行政」とでも呼ぶべきカオスな状態になってしまいます。

「そんなことは府がさせない」という声が飛んできそうですが、選挙で選ばれた区長が民意を背景にしている限り、それは非常に困難です。そもそも特別区の権限を東京都のそれより強化することを、大阪都構想は売りにしているのですから。
一方で、「東京都はうまく行ってる」という意見もよく聞きますが、東京都はものすごくお金持ち(不交付団体と言います)な上に、都内で特別区に人口が集中しているという構図が大阪府と決定的に違うので、比較になりません。

ちなみに、東京の特別区もいわゆる「箱物」を多く持っています。美術館やスタジアムや複合施設など、都立と区立の重複施設はたくさんあります。東京都民の皆さんがこれを二重行政と認識しているかは別にして、特別区でも箱物は造られるのです。
(このあたりの事情は余力があれば、別項に詳しく書きたいと思います)

さらに都構想によって、別の深刻な多重行政も生じます。
都構想では、ごみ処理、介護保険、住民情報システムの運用などの住民生活に直結したサービス(水道も可能性がある)は「一部事務組合」という組織が担うことになっています。これは府でも区でもない、「中二階」のような組織で、住民からは中途半端に遠く、府も直接関与ができません。
また、すでに他の自治体が加入していたりと、非常に複雑でいびつな組織になることが予想されます。
これは、住民生活の根幹を支える部分に1.5重行政を作るようなもので、行政の効率化やスリム化とはほど遠い制度で、大きな課題を抱え込むことになります。

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◆二重行政解消は「ゼロコスト」で今すぐやれば良い

三点目は、二重行政の解消は今すぐできるし、しかもタダという点です。

結果が良いか悪いかは別にして、すでに府市の二重行政であった地方衛生研究所、信用保証協会、病院、大学などで統合は進んでいます。
このことが示すのは、二重行政の解消は「別に都構想でなくてもできてしまう」という皮肉な事実です。しかも、余分なコスト1000億円をかけずに。

「いやそれは維新の府知事、市長による『バーチャル都構想』だからでできることで、これを制度的に恒久化(固定化)するのが都構想だ」という反論もよく聞きます。しかし都構想では、第2点目の指摘通り二重構造が解消されるわけではなく、利害関係者が増えることでかえってややこしくなりますし、第1点の指摘通りタダでできていることになんで1000億円も費やさないといけないのか、合理的な説明がつきません。

最後に何より問題なのが、まさしく「恒久化(固定化)」されること、すなわち「元に戻せない」ことです。
1000億円をドブに捨てることになっても、ディカプル行政で収拾がつかなくなっても、一度大阪市が廃止されてしまうと、二度と元に戻せません。

 

二重行政解消という「ショボいリターン」に、大阪市廃止という「大博打」を打つことが、いかに割に合わないことか、すべての大阪市民の皆さんに知っていただきたいと思います。