野村ともあき【非公式】ブログ|前堺市議会議員

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堺市立東文化会館について

統一地方選挙を前にして様々な議論が熱を帯びてきています。立場の違う多様な意見が交わされることは、議論の質も高めますし、また市民(有権者)さんが投票する際の判断材料の幅を広げることにもなりますので、心から歓迎したいところです。


ただし、それは事実に基づいた建設的な政策論議であれば、の話です。


今般、私の地元で大阪維新の会の議員が出したチラシにおいて、「東区の自民党議員」と特定した上で、いわれのない批判がなされております。内容的にはかなり扇動的な印象で、読まれた方から誤解されては私としても心外なので、少し本ブログで事実関係を整理しておきたいと思います。


大変ローカルな話題で恐縮なのですが、当該の維新議員のやってることや主張には看過できない点、疑問に感じる点があり、堺市議会全体の信頼にも大きく関わってくることですので、広く開かれたブログで書かせていただくことをご容赦願いたいと思います。

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問題とされているのは、堺市東区にある「堺市立東文化会館」の指定管理の公募選定結果についてです。


東文化会館は、指定管理が平成27年4月で更新を迎えるにあたり、昨年(平成26年)に公募・選定が行われました。選定の結果、「公益財団法人堺市文化振興財団」が業務を請け負うこととなりました。
「指定管理者の指定」は議会の議決事項ですので、本件は12月議会に上程され、その結果、公明、維新、そして自民党会派の一人が反対しましたが、私を含めた賛成27名で可決されました。


本議案を巡っては議決前から様々な動きがありました。採決にあたって私も賛否の判断を迫られましたので、出来る限り情報を集め、努めて客観的に「事の正否」を見極めるようにしました。


以下に、私が「賛成」に至った経緯を記します。


堺市立東文化会館」は南海高野線野田駅前にある、座席数400席のメインホールを中心に各種展示、集会機能を備えた東区唯一のコンベンション施設です。平成17年に生涯学習施設、平成19年に文化ホール棟が開業しました。
指定管理者制度が採られており、指定管理者が行う主な業務として、(1)施設の運営に関する業務、(2)文化芸術振興事業に関する業務、(3)施設等の維持管理に関する業務、(4)その他の業務、が定められています。
指定期間は概ね5年間。次の指定期間は平成27年4月1日〜平成32年3月31日までの5年間となっています。
指定管理料は年間約1億3千万円です。


指定管理については、まず、平成26年6月25日、堺市文化観光局指定管理者候補者選定委員会(以下、選定委員会)が開催され、ここで公募要件や応募の期間などが審議されました。選定委員会の委員は弁護士、公認会計士、大学教授2名ら外部の有識者と市の総務局の職員1名の計5名です。

※ちなみに選定委員会の議事録はすべて公開されています。平成26年6月25日の議事録を以下にリンクしておきます。
http://www.city.sakai.lg.jp/shisei/gyosei/shiteikanrisha/shiteikanrikaigiroku/sennteiiinnkaikaigiroku.files/higashi-bosyuyoko.pdf


公募は事前の質問や現地説明を経て8月18日〜9月1日に行われ、5者の応募がありました。公開情報ですので全ての応募団体を挙げておきます。
(1)さかいヒルフロントフォーラム&近鉄ビルサービス
(2)公益財団法人堺市文化振興財団
(3)株式会社大阪共立
(4)株式会社アステム
(5)JTB南海グループ


審査は書類審査を経て10月に面接が行われ、(2)公益財団法人堺市文化振興財団が指定管理者に選定されました。
東文化会館の指定管理業務はこれまで(1)さかいヒルフロントフォーラム&近鉄ビルサービス(代表団体は地元のNPOである「特定非営利活動法人さかいhill-front forum」)が担ってきましたが、他の4団体とともに選外となりました。


12月19日、堺市議会第4回定例会最終本会議において本件は上程、可決され、指定管理者が確定しました。
採決では、先述の通り公明、維新と、自民党の一名が反対しました。


さて、維新議員のチラシや街頭での主張では、私が賛成に回って前の指定管理者を潰そうとしたかのようなミスリードを誘い、堺市議会全体を指して「巨大な既得権と化している」というよくわからない主張を展開しておられます。自身が所属する議会を指して、しかも副議長を出している会派(維新)が何をか言わんやという感じですが、逐一反論するのは、本エントリの本旨ではないので控えておきます。
以下、客観的な事実関係のみを示しておきますので、「正否」の判断は読まれた方にお任せするに留めたいと思います。

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まず、本議案は否決されたとしても、指定管理が元の事業者である「さかいhill-front forum」になるわけではありませんでした。仮に否決された場合は堺市が直営することになっていました。
また採決は、東文化会館の他に栂文化会館(南区)、美原文化会館(美原区)の三施設について一括して行われました。
つまり、議案を否決すると、4月からいきなり三施設を市が直営することになり、職員も備品も市からの持ち出しとなり、それこそ行政の肥大化につながるばかりか、利用者である市民への影響が大きすぎる、そういう状況だったのです。


繰り返しますが、議会議案として上程された時点では、東文化会館の指定管理が「さかいhill-front forum」に戻る可能性はすでになかったのです。


「それでも選定結果を承認できない!」と言い張るほどの疑義は選定の過程にはありませんでした。
先述の通り、選定委員会は外部の有識者らで構成され、議事録も残っています。これを不正だと断じるには相当な理由が必要であり、“外郭団体批判”だけではとても反対する理由にはなり得ませんでした。私はむしろ、反対に回った公明党や維新会派の行動に違和感を感じた次第です。


仄聞するところによると当該の維新議員が「堺市立東文化会館の運営を再度NPO法人さかいhill-front forum」に求める署名」なるものを持って地域を回っているとのことです。
東文化会館の指定管理料は年間約1億3千万円、管理期間である5年間で6億円以上という巨額なものです。これほど多額の税金が支払われている施設の運営を、特定の一法人に任せるための署名を議員が持って回るなどというのは、「指定管理制度」を規定した地方自治法の趣旨に反することを薦める行為であるばかりか、公正、公平の観点から問題があると言わざるを得ません。


一般論として申しますが、もし、議員の立場にある者が、公正に行われた指定管理者の選定結果に対し直接の利害関係にある者の意向を組んで働きかけを行ったり、市民に署名をお願いするなどという行為があるとすれば、それは堺市の公募・入札制度への信頼を揺るがす重大な背任行為であり、場合によっては不正取引や利益供与にもつながる疑いが生じます。


議会・議員は地方自治体における二元代表制という意思決定の仕組みにおいて、行政の決定に対し「是か非か」という二者択一的な意思表示しかできません。しかし、その決定の過程は複雑多岐にわたる要素が絡み合う上、決定の場である議会は一般的には馴染みの薄い存在です。議員には、議会において「事の正否」をしっかりと見定める高い専門性と、一般市民に対しわかりやすく真実を伝える真摯な態度が求められます。


議会が遠い存在であることによって生じる「情報の非対称性」に付け入ることで市民の「誤謬」を誘うようなやり方は、政治家としては不誠実ですし、ましてやそれを他議員を貶める材料に歪曲したり、自分自身や特定の利害関係者の権益を隠匿するために利用するなどという行為があるならば、大変遺憾な事態です。

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以上、本稿の指摘は、すべて客観的な事実に基づく中立な立場に立ったものです。


私は、東文化会館の前・指定管理者が取り組んでこられた様々な地域活動や文化事業を否定するわけではありません。私自身、館で行われた多くの展示や催しに足を運びましたが、どれも素晴らしい取り組みでありました。そのことは、(なかなか管理者にお会いできないので)インターネット上からで甚だ失礼とは存じますが、心から敬意を表したいと思います。


また、次の5年間を担当する堺市文化振興財団におかれましては、前・指定管理者の活動実績に劣らない会館運営を行っていただけることを、地元住民のひとりとして切に期待したいと思います。